ソフトバンクG、投資赤字で岐路に立つ孫正義 投資活動は当面縮小、事業家に回帰するのか

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今回の決算発表前の2月上旬ごろ、著名アクティビストのアメリカのエリオット・マネジメントは孫社長と面談した。SBG株を約2%保有していると見られるエリオットは、アリババ株の一部を売却し200億ドルの自己株買いをすること、社外取締役を増やしてコーポレート・ガバナンス(企業統治)を強化すること、SVFの情報開示を改善して透明性を高めることを要求した。

孫社長は決算会見で「これまでも大きな自己株買いをしてきた」と述べたうえで、「時期や金額は社債償還などとのバランスを見ながら」と含みを残した。一方でアリババ株を売却して自己株買いの原資を作ることには、「今でもアリババは高成長を続けている」と否定的な考えを示した。

物言いをつける社外取締役が去った

SBGがアクティビストの標的になるのは今回が初めてではない。アクティビストが目をつけたということは、SBGの株価が割安であることの裏返しだ。関係者によれば、エリオットは「SBG株が異常に低く評価されているのは、社外取締役が少なくガバナンスが機能していないから。ウィーワークで営業外を合わせて約8800億円の損失を出したのがその証拠だ」と主張しているという。

【2020年2月20日12時20分追記】初出時、「アクティビストの標的になるのは今回が初めてのこと」とありましたが上記のように訂正しました。

現在、SBGの社外取締役は、11人中2人しかいない。2018年には日本電産の永守重信会長、2019年末にはファーストリテイリングの柳井正会長兼社長がいずれも多忙を理由として任期中に辞任。孫社長に物言いをつける社外取締役が相次いでSBGを去った。

難しい舵取りを迫られている孫社長(撮影:尾形文繁)

孫社長はSVFの設立をきっかけに、事業会社から投資会社への脱皮を2年前に宣言した。が、巨額赤字の計上が相次ぎ、それが成功したとはいいがたい。今回の決算を見る限り、SBGでは事業子会社が稼ぎ出した利益を、投資事業が食う形になっている。

2号ファンドの設立を延期したことで投資活動を極端に縮小せざるをえない中、再び事業会社に軸足を移すのか。潮目が変わったどころか、孫社長自身が今、岐路に立たされている。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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