ホンダ、最先端の自動運転車に2つのハードル 限定100台、1100万円の車両に託された重責

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ホンダの「レジェンド」に搭載されたレベル3の自動運転機能は渋滞時に稼働する(記者撮影)

ピピッ、ピピッ、ピピッー。「目線を外し、中央のテレビを見ても大丈夫です」。

システムの通知音ととも開発担当者の言うことに従い、おそるおそる前方から視線を外しインパネのスクリーンに目をやる。ハンドルが自動で動き、渋滞する高速道路を前方の車と車間距離を保って徐々に進んでいく。数秒だったが、自動運転レベル3を体験できた瞬間だった。

ホンダは3月下旬、世界で初めてレベル3の自動運転機能「トラフィックジャムパイロット」を搭載した改良型セダン「レジェンド」の試乗会を行った。5段階のうちレベル1や2が、自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)や高速道路上での追い越しなど一部機能の自動化にとどまる一方、レベル3は特定の条件下ではあるもののシステムがアクセルやブレーキ、ハンドル操作を行う。ドライバーはシステム稼働中なら、走行中でも前方から目線を離すことも可能だ。

トヨタ自動車の「アドバンスドドライブ」や日産自動車の「プロパイロット2.0」はレベル2に該当するが、ホンダは2020年11月に国土交通省の認可を受けて型式を取得し、世界に先駆けたレベル3の自動運転技術を投入した。

1000万通りの走行条件で実証

ホンダの自動運転機能は、高速道路上で渋滞に入り時速30キロ以下の状態になれば稼働し、同一車線で停止や発進、速度を調整しながら、車間距離を自動で保つ。ストレスがかかりやすい渋滞時の運転で、ドライバーへの負担を軽減することが大きな狙いだ。

今回の発売に至るまで、約1000万通りに及ぶ走行条件のシミュレーションと、国内の高速道路で約130万キロメートルの実証走行を行った。本田技術研究所で自動運転システムの開発責任者を務める杉本洋一エグゼクティブチーフエンジニアは「安全性や信頼性を重視して手厚くするように作り込んだ」と自信を見せる。100台限定でリース販売(3年間)の予定で、約60台を受注している(5月初旬時点)。

事故の低減や過疎地域での新たな交通手段など多くの可能性を秘める自動運転車だが、ホンダのレジェンドだけを見ても乗り越えなければいけないハードルがある。

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