参院選「特定枠」の想像以上にひどい現実 自分の名前連呼せず、「付け足し」候補の悲哀
ちょうど1年前、当時の国会で審議され成立した公職選挙法の改正により、参院選比例区に「特定枠」が新設された。
その際、特定枠という制度がいかにひどいものかということをこの欄で取り上げたが、そのときは制度として多くの矛盾や問題がある点を指摘するにとどまった。ところが参院選が公示され、候補者が実際に活動を始めると、特定枠が生み出す現実は想像以上にひどいようだ。
特定枠候補は選挙区候補の「下働き」に
今回の参院選に特定枠で立候補したのは自民党が2人、「れいわ新選組」が2人の合計4人だった。候補者が少ないこともあってマスコミは特定枠について詳しく報じていないが、東京新聞が自民党の2人の特定枠候補を記事にしている(7月12日付朝刊など)。それに合わせて筆者も取材を受けたが、場当たり的な制度いじりがここまで選挙を歪めるのかと驚かされた。
自民党の特定枠候補は、選挙区が合区となった「鳥取・島根」と「徳島・高知」の2人で、候補者を出せないほうの県から立候補している。特定枠の制度上、2人は自民党比例区の当選順位の1位と2位に位置づけられるので、当選することは間違いない。
ほかの候補者のように一生懸命、選挙運動をしなくても当選するのであるからさぞかし喜んでいるかと思いきや、東京新聞のルポは候補者自身や支持者がこの制度の問題点や矛盾をいやというほど感じていることを伝えている。
「島根県枠」で特定枠候補となった元衆院議員の三浦靖氏(比例中国ブロック)は、「自分の選挙活動はほぼ何もできない」と話し、鳥取・島根選挙区に立候補した候補者の応援に徹しているという。特定枠候補は公職選挙法によって選挙事務所の設置や選挙カーの使用、ポスターの配布や掲示、さらには個人演説会も禁止されている。
つまり自分のための選挙運動はほぼすべてできない。したがって秘書や支持者も、選挙区候補の運動の下働きのようなことしかできなくなっているのだ。
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