ネットと愛国 安田浩一著
ネット右翼の中でも在特会(在日特権を許さない市民の会)は特異な存在である。もっぱらネット上で活躍するあまたの集団の中にあって、激烈な街宣活動を繰り返す。設立から5年半、今や1万を超える会員を擁するという。朝鮮学校や在日朝鮮人の住む町へ出掛けておぞましい差別的罵詈雑言を浴びせかける一部始終や、労組、公務員、マスコミを敵として糾弾する様を、自ら撮影しネットで配信して会員を増やしてきた。
その指導者や会員、周辺の保守運動家に肉薄したドキュメンタリーとして出色だ。ごく平凡な男女がなぜ過激な民族差別的言動に走るのか。指導者の罵倒術に魅せられ自らの暴言に酔う、その深層心理にあるものは何か。恵まれた地位を享受する者すべてを敵視する生身のネット右翼に迫ることで、ネット社会の落とし穴をえぐり出す。大衆社会状況の今後を考えるに貴重な材料を提供するユニークな書である。(純)
講談社 1785円
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