フジテレビのドラマがなんとも「惜しい」理由 あの成功体験に縛られすぎていないか

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亀山・大多両氏は、1990年代のドラマブームをけん引した、言わば業界のレジェンド。それだけにこのコメントには重みがあり、称賛が集まっていたのですが、今期の『5→9』はすでに多くのファンを持つマンガ原作であり、キャストは石原さとみさんと山下智久さんという実績十分のコンビでした。まさに朝令暮改。オリジナルストーリーに、福士蒼汰さんと本田翼さんのフレッシュなコンビを抜擢した『恋仲』とは異なり、以前の“原作+人気者”というコンセプトに戻ったのです。

トップと現場の意見が食い違っているのか? それともトップの発言がコロコロ変わっているのか? 長年月9ドラマを応援してきたファンの中には違和感を覚える人もいるようです。

テレビ局の足し算と視聴者の引き算

次は、火曜22時放送の『サイレーン』。前期の『HEAT』が記録的低視聴率だったこともあって、「絶対に失敗できない」という覚悟で臨み、当初は番宣の効果や菜々緒さんの悪女ぶりが大きな話題となり、視聴率は初回こそ12.9%を記録したものの長続きせず、直近では5%近く下がった8%台を推移しています。

『サイレーン』を見ていて感じるのは、詰め込み型の作品であること。刑事モノのサスペンスというだけでなく、犯人を追うアクションシーン、シリアルキラーとの対決、菜々緒さんの大胆な露出、刑事同士の密愛など、さまざまな要素で視聴者を引きつけようとしているのがわかります。

しかし、思えば『HEAT』もこのような詰め込み型の作品でした。カッコイイ消防シーンが存分に見られると思いきや、ビジネスや地域活動などほかの要素もあり、「期待していたものと違う」「何に焦点を当ててみればいいのかわからない」と視聴者を困惑させていたのです。

これは、「制作サイドから見たら足し算のつもりが、視聴者から見たら引き算になっていた」という低迷のパターン。その点で『サイレーン』は、刑事モノやサスペンスのファンから見たら、足し算ではなく、引き算になっている可能性があります。

傑作でも見てもらえない水曜22時

水曜22時の『無痛~診える眼~』は、エンタメ度の高い医療サスペンス。「見ただけで病状や犯罪者がわかる」という特殊設定を生かした脚本と、『ストロベリーナイト』『家族ゲーム』などを手掛けた佐藤祐市監督の演出はともに巧みであり、スリリングな展開で楽しめます。

つまり、「文句なしに面白い」作品なのに、視聴率は低迷し、裏番組の日本テレビ系『偽装の夫婦』を一度も上回ることができていないという苦境に陥っているのです。現在の視聴者が好むのは、前期最も支持を集めた『花咲舞がだまってない』(日テレ系)のような対立関係がシンプルでわかりやすい作品。その意味で人間関係が複雑かつハードな『無痛』は不利なのですが、それだけが理由とは思えません。

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