全区間一律50円、小田急電鉄「子育て支援」の実情 ロマンスカーにも「応援車」、利用客の反応は?

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――子ども用トイレ設置の目的は?

当社では幼児のお子さまが使いやすい「子ども用トイレ(またはファミリートイレ)」もあり、初めて導入したのは2012年度の相模大野駅トイレリニューアルの際です。利便性と清潔さを両立し、誰もが快適に使える駅トイレへの刷新を目指し、リニューアルを計画しました。整備後の利用者アンケートでは、特に幼児用の小さな便器や手洗い場が設置されている点について、「非常に使いやすい」「助かる」といった声が多いです。

当時、多機能トイレ(いわゆる多目的トイレ)が混雑し、本当に必要な人が利用しづらいという課題がありましたが、機能の分散化を図るため、幼児のおむつ替えや排泄が同時に行えるオープンで使いやすい仕様の「子ども用トイレ」を新設したことで、利便性を格段に向上させました。

この相模大野駅での成功事例をきっかけに、利用者からのニーズが高い主要駅や、再開発に伴いリニューアルを行った駅、新宿駅や下北沢駅などにも、順次子ども用トイレを設置しました。現在、新宿駅、東北沢駅、下北沢駅、世田谷代田駅、相模大野駅の計5駅に設置しております。今後の詳細な整備状況は「小田急の子育て応援ナビ FunFanおだきゅう」でご確認できます。

鉄道以外でも子育て支援活動を実施

同社は、子連れの利用者も安心して駅を利用できるように、子育て関連設備の整備を積極的に進めている。現在、全70駅のうち69駅において、おむつ替えや授乳などが可能なベビーシートやベビーチェアを含む「お子さま向け設備」を整備している。

ベビーカーシェアリングサービス「Share Buggy」も2021年12月から行っており、ベビーカーを持参せずに、駅や移動先で気軽に利用できる。ベビーカーを持って電車に乗る大変さや、移動先で、抱っこ紐で買い物をする負担を軽減し、手ぶらでの気軽な外出をサポートしている。

鉄道事業以外でも子育て支援活動を行っている。親子体験イベント(春・夏)や、小学3~6年生の親子を対象に親子ゼミ等も開催。親子ゼミは小田急線の安全運行を支える鉄道現業の裏側に「解説付きで潜入」できる体験イベントで、「働くこと」や「鉄道の役割」を楽しく学べる。

さらに2024年10月からは、オルタナティブスクール「AOiスクール」を開校。不登校という近年増加傾向の社会課題に対し、不登校の時間で将来の自立を支援していく学びの場として2023年9月にプレ開校。不登校経験を持つ2人の現役運転士の発案であり、好きな鉄道に夢中になったこと、人生を切り開いた経験や、好きなことを探究する意義などを伝え、子供たちが学ぶ楽しさを実感できる。鉄道事業者としての小田急にとどまらず、生活基盤としての小田急ということが分かる施策である。

公共交通とはさまざまな人々が利用する。人それぞれに事情があり、同じ空間で時間を共有するもの。だからこそ、「思いやり」が大事である。小田急が会社の取り組みとして、大々的に子育て応援の方策を実施していることは、今後のさまざまな鉄道事業者にとって、良い効果を生むことであろう。

渡部 史絵 鉄道ジャーナリスト

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わたなべ・しえ / Shie Watanabe

2006年から活動。月刊誌「鉄道ファン」や「東洋経済オンライン」の連載をはじめ、書籍や新聞・テレビやラジオ等で鉄道の有用性や魅力を発信中。著書は多数あり『鉄道写真 ここで撮ってもいいですか』(オーム社)『鉄道なんでも日本初!』(天夢人)『超! 探求読本 誰も書かなかった東武鉄道』(河出書房新社)『地下鉄の駅はものすごい』(平凡社)『電車の進歩細見』(交通新聞社)『譲渡された鉄道車両』(東京堂出版)ほか。国土交通省・行政や大学、鉄道事業者にて講演活動等も多く行う。

 

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