ジャパンディスプレイ、下方修正体質に決別 好決算に影を落とす、シャープ再建の行方

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ジャパンディスプレイが、ここにきてようやく息を吹き返したのは米アップルとの取引が軌道に乗った要素が大きい。有価証券報告書によれば、2014年度の売上高7509億円のうち、約4割はアップル向けが占めている。

iPhoneの増産対応のため、新工場を建設中

ジャパンディスプレイの命運を握るiPhoneの販売だが、アップルの決算を見る限り絶好調が続いている。10月27日にアップルが発表した2015年度(2014年10月~2015年9月)決算によると、iPhoneの年間販売台数は前年比36%増の2.3億台だった。

スマホ業界は世界シェアの25超%を韓国・サムスンが握る。ただ、同社が得意とする中・低価格帯スマホは中国メーカーの侵食が激しい。調査会社大手・トレンドフォースは「サムスンは2015年度、スマホ出荷台数が初めて減少に転じるだろう。一方でアップルの成長モメンタムは続く」と予測している。

得意とする高精細ディスプレイはスマホ向けの需要が大きい

iPhone向けの液晶パネルは、ジャパンディスプレイ、シャープ、韓国LGディスプレイの3社で供給している。

中でもジャパンディスプレイはタッチパネル機能を内蔵するインセル技術や量産技術に優れているため「アップルからの技術面での信頼が厚い」(液晶アナリスト)とされる。

昨年は液晶パネルに使うバックライトメーカーで生産の不具合が発生。思ったように部品が調達できなかったことで、伸びゆくiPhoneの需要をつかみきれなかった。

今期はその影響が収束したうえ、前期末に千葉県の茂原工場に新設された液晶パネルラインが本格稼働を開始。これまで応え切れなかった注文に、生産が追いつくようになり、その効果が業績に反映された。

加えて、石川県白山市ではアップルからの資金援助で液晶パネルの新工場を建設中だ。2016年度に稼働すればiPhone向けの生産能力はさらに2割強拡大する見込みで、アップルの成長に追随する準備を整えている。

ただ、不安材料もある。経営危機に陥ったシャープの趨勢だ。同社は液晶事業の提携や売却を視野に、複数の会社と交渉を開始している。その売却先として、ジャパンディスプレイと大株主の産業革新機構が挙がっているが、台湾のEMS(電子機器受託製造サービス)世界最大手・鴻海精密工業も、候補に名を連ねている。

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