なぜ都立新宿山吹高校は「不登校経験者」や「尖った生徒」が集まるのか?マイペースで学べる《単位制・無学年制》、《同調圧力がない校風》の魅力

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また、新たな教育のスタイルの取り組みとして、通信制では今年度から民間事業者と連携し、平日の昼間に「+αコース」として探究コース、DXコース、グローバル人材育成コースも設置。受講のみでは卒業単位には認定されないが、資格を取得すれば単位認定される。「外部講師による対面講座のため登校が必要ですが、どの講座も15人程度が受講しており、通信制の子たちの意欲の高さを感じています」と永浜氏は話す。

「不登校を治す魔法の学校」ではない

自分で選び、デザインする新宿山吹高校の学び。永浜氏は「本校は生徒だけでなく、教員にとっても同調圧力が低い学校」だと語る。

永浜統括校長
永浜裕之(ながはま・ひろゆき)/都立新宿山吹高等学校統括校長。1984年に東京都教員として採用される。91年に新宿山吹高校の開校と同時に着任、9年間で担任や教務部、生涯学習部などを担当。東京都教職員研修センター、東京都教育庁指導部等を経て、2020年より現職。全国高等学校通信制教育研究会会長も務める(撮影:編集部)

「一般的な学校は朝から晩まで一律の集団行動をしますが、同調圧力や居づらさを感じて疲弊してしまう子もいます。教員もそうした環境の中では、生徒に何かあれば『担任は何をしていたのか』と言われがちです。

しかし、本校には多様な生徒が集まっており、自主・自律が尊重されるので、同調圧力がありません。単位修得率はおよそ7割で、3割は単位を落としていますが、担任が責められることもありません。生徒も教員も居心地がよく、力を発揮しやすい環境だと思います」(永浜氏)

まれに保護者から「もっと手厚く指導してほしい」と言われることもあるそうだが、永浜氏はこう話す。

「本校は、学校を休んでも誰も気にしないですし、人間関係だって築いても築かなくてもいい、不登校経験者も通いやすい学校。しかし、“不登校を治す魔法の学校”ではありません。悩みや困り事は相談室でしっかり受け止めますが、登校や学習に関して積極的に働きかけることはしません。

何事も自分の責任で、というスタンスです。体調と折り合いをつけながら学び続けたり、自分の学びたいことを追求したり、自由が保証された通いやすい仕組みを利用してそれぞれの学びを実現してほしいと考えています」

30年以上も前から生徒の自主・自律の精神を尊重してきた新宿山吹高校。さまざまな背景から「自分で選び、学ぶ」環境を選択したい生徒が増えている今、同校は東京都が目指す「新たな教育のスタイル」を力強く牽引する学校として、さらに存在感を増しそうだ。

東洋経済education×ICTでは、小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。
吉田 渓 フリーライター

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よしだ けい / Kei Yoshida

神奈川県出身。大学在学中からフリーライターとして執筆活動を開始。近年は心と身体、教育、ワークスタイルなどを中心に執筆を行う。ライフワークは農業や漁業にまつわる言い伝えや桜の言い伝えを調べること。著書に『働く女のスポーツ処方箋』がある。

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