内閣府が17年に公表した経済白書では、「長時間労働の是正や柔軟な働き方の普及に伴う余暇時間の増加は娯楽等の消費活動を促進するといった消費行動への影響も想定される」と明記されている。
当時はデフレ圧力が根強く残る中で、消費を喚起することが重視され、「プレミアムフライデー」などの施策もその一環として導入された。早く仕事を終えて消費を促すという発想は、まさに需要不足への対応策であった。
このように、労働時間と余暇時間はトレードオフの関係にあり、労働時間が増えれば余暇時間は減る。余暇時間が減れば、消費活動に充てる時間も減るのである。
これは単なる時間の問題ではなく、労働時間の増加によって消費者の心理が変わる可能性もある。企業の供給制約が緩和されたとしても、個人の体力的な供給制約によって消費したくてもできないという「制約された需要」が生じる可能性がある。
所得が増えても、疲れていたら消費できない
むろん、労働時間が増えることで賃金が増加し、可処分所得が増える(個人消費にポジティブ)という期待もある。
しかし、仮に家計の「制約された需要」が増えてしまえば、企業業績は伸び悩むだろう。結果的に、企業が積極的に賃金を引き上げるインセンティブは弱くなる。供給力が高まっても、それに見合う需要がなければ、企業収益は伸びず、結果として賃金上昇も限定的となるのである。
すなわち、需要と供給が中長期的にはバランスするという前提に立てば、労働時間の増加によって経済全体の成長率が鈍化する可能性が高い。




















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