シャープがアクオスを爆発的にヒットさせた01年になっても中村(当時は副社長)はなおこう言っている。
「テレビを置く場所は部屋の角が多く、収まり具合は(ブラウン管テレビが)一番良い」
絵に描いたような「成功のジレンマ」だ。
68年に発売した「トリニトロンカラーテレビ」は2億8000万台売れ、「SONY」の名を世界に知らしめた。
トリニトロンの名はキリスト教の三位一体を意味するトリニティに由来する。創業者・井深大が率いるテレビ開発部隊は悪戦苦闘の末、3本の電子銃から電子ビームを出力する従来の方式を1本の電子銃から3本のビームを出す「1ガン3ビーム」という方式に変え、電子銃の口径を大きくして画像をシャープにすることに成功した。
「アナログ」vs.「デジタル」の戦い
それから四半世紀。ソニーのテレビ開発部隊は画像処理や音響効果を磨き上げ、20世紀の終わり、その画質と音質は最高水準に達した。生まれたての液晶テレビとは比べるべくもない。初期のアクオスの解像度は640×480画素で、現在の8Kテレビ(7680×4320画素)の100分の1以下。フィギュアスケートでジャンプの前に選手が加速すると、液晶の反応が間に合わず、後ろの看板がドロリと溶けて見えた。




















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