新ジャンルのお酒「クラフトサケ」、日本酒・ワイン・ビールに次ぐ第4の醸造酒になれるか…どんな味なのか?注目される背景

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細井CEOは、将来独立したいと考えている若者が、木花之醸造所で醸造、販売経験を積んで、免許取得のノウハウや資金調達について学び、全国各地で醸造所を立ち上げることができれば、お酒の世界はもっともっと面白くなると考えている。

「そもそも、全国の酒造りを志す若者のステップアップの場として、機能できればという思いで、この醸造所を立ち上げた。現在の醸造長も独立予定であり、次期醸造長候補も随時募集している」(細井CEO)。現在の醸造スタッフは全員が女性。外国人が在籍していたこともある。

細井洋佑 木花之醸造所 CEO
細井洋佑(ほそい ようすけ)木花之醸造所 CEO(写真:筆者撮影)

さらに木花之醸造所は、2024年に、シンガポールに醸造所を設けて、クラフトサケの醸造を開始した。「シンガポールでも日本酒の人気は高いが、冷蔵コンテナによる輸送費や関税などが加算され、4合瓶で1万円を超えることもざら。ならば、現地でSAKEを醸造し、新鮮かつ安価に楽しんでもらおうと思った」(細井CEO)。

シンガポールはトロピカルフルーツや香辛料の種類が豊富で、日本にはないクラフトサケに挑戦できる環境が整っている。将来的にはシンガポールから他国への輸出、さらに日本市場への展開もあるかもしれない。

地域の文化・経済・環境を豊かにするクラフトサケ

クラフトサケブリュワリー協会の会長を務める岡住修兵氏が2021年秋に設立したのが、秋田県男鹿市の「稲とアガベ」醸造所である。実は岡住氏は、木花之醸造所の初代醸造長を務めていた。

看板商品の「稲とアガベ」は、テキーラの原料アガベから精製されるアガベシロップを用いたクラフトサケ。秋田の銘酒・新政酒造で醸造の仕事をしていた日本酒好きの岡住氏と、テキーラ・マエストロの資格を持つほどのテキーラ好きの妻とのアイデアから生まれた。

もう1つの人気商品「交酒 花風」は、副原料としてホップを使用したクラフトサケ。ホップ由来のライチやマスカットのような風味が特徴だ。

「稲とアガベ」と「交酒 花風」
看板商品「稲とアガベ」と、もう1つの人気商品「交酒 花風」(写真:稲とアガベ提供)

「おいしいお酒は、人を幸せにするもの。稲とアガベはその幸せを、お酒を飲む人だけではなく、地域のすべての人に広げるような酒造りをしたい」と岡住氏は考えている。地域文化・経済・環境の視点から考え、酒造りに落とし込む。

だから近隣のコメ農家と密なコミュニケ―ションを図り、適正価格で米を買い入れる。原料のお米を磨きすぎない。副産物の酒粕で「発酵マヨ」(マヨネーズ)などの新しい食品を作る。何より、男鹿地域の過疎化に歯止めをかけたい。そのため、稲とアガベ醸造所は、旧男鹿駅舎をリノベーションして建てられた。醸造所のほかに、飲食店も宿泊施設も男鹿で展開している。そのおかげで、観光客が着実に増え、雇用も拡大している。

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