「精神主義は現実に機能しない?」高市早苗氏≪馬車馬宣言≫に対するビジネス界の教訓
興味深いのは、高市新総裁のスピーチのあとの石破茂現総裁(総理)のスピーチだ。
「あそこまで『ワークライフバランスをやめた』と言われると大丈夫か、という気がせんではないんですが」と発言したことだ。そのあと、「己を捨てて、全身全霊、国家国民のために、次の時代のためにという決意の表れだと思っております」と述べてはいるが、この発言は大丈夫かと、現総理・総裁自身も感じたということではないだろうか。
事実、高市氏の発言のうち、とくに「ワークライフバランスという言葉を捨てます」という発言が批判の対象になっている。
過労死弁護団全国連絡会議は6日、以下の声明を出した。弁護団は、電通で起きた過労自殺の遺族側代理人だった川人博弁護士が代表幹事を務める。声明は「公務員など働く人々に過重労働・長時間労働を強要することにつながり、古くからの精神主義を復活させる」と批判した。

2014年に過労自殺した総務省のキャリア官僚男性の遺族も代理人を通じ、「大変憤慨しております。このような発言をしたことについて、深く反省し、家族を亡くした過労死ご遺族に謝っていただきたい」とするコメントを出した。
特に批判の対象となったポイントは?
内閣府は「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」を明らかにしている。
仕事と生活の調和が実現した社会とは、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」であるとして、以下の3つを目指すべきとする。
①就労による経済的自立が可能な社会
②健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会
③多様な働き方・生き方が選択できる社会
高市氏の発言で批判の対象になっているのは、主に②「健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会」についてであろう。働きすぎによる健康障害や過労死が大きな社会問題になっている中での高市氏の発言は、この問題解決のための政策に反するという指摘だ。
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