不登校の生徒が集う「生野学園」、人と深く関わる寮生活が子どもを変える理由 本来の自分を生きるための自由な学びと生活
一斉授業ではなく、一人ひとりに合わせた学び
生野学園は2024年に高校が、2025年には中学校も学びの多様化学校に指定されている。そんな生野学園における学びは、主要5教科の学年別学習、選択学習、多目的学習で構成されている。選択科目は各スタッフの強みを活かした内容となっており、園芸や写真、プログラミングなど幅広い。また、多目的学習は教科や学年を超えてスタッフがチームをつくり、テーマに基づいた授業を行うというものだ。
「小学校低学年から不登校になっていた子もいれば、中学の途中まで進学校でバリバリ勉強していた子もいます。本校では基本的に一斉授業は行わず、一人ひとりに合わせた教材を用意して進めています。高校卒業後の進路は、就職する子、専門学校や大学に進学する子、何がしたいかゆっくり考えるという子などさまざまで、大学進学を希望する子には個別授業などで対応しています」
生野学園を卒業した後も、一人ひとりの人生は続いていく。卒業後もスタッフに相談をしにくる子もいるそうだ。不登校を経験した子どもたちが安心して過ごせる学びの場として誕生して36年。生徒間やスタッフ間で受け継がれてきたものも多いようだ。
「生野学園の行事は、子どもたちが決めて実行します。行事は2年生が中心となって運営しますが、上級生の姿を見てきましたし、3年生と話をする中で受け継がれているものもあります。また、スタッフ同士も各学年で新人はベテランと組み、子どもたちへの声掛けや接し方など、ベテランの動きを見て学んでいます」
加えて、保護者間で受け継がれているものもある。卒業した生徒の保護者たちの「生野高星親の会OB会」では「今、悩んでいる子やその保護者のために、自分たちの経験を役立てたい」という思いから兵庫県や大阪府などの各地で「不登校の子どもと向き合う相談会」を実施している。この相談会を通じて生野学園を知ったという親子も多いそうだ。
社会のあり方やライフスタイルが急激に変化し、今は人と顔を合わせずに日々を過ごすことも可能だ。人と関わることで心が激しく動き、傷つくこともある。それでも、人と関わることは、相手を知り、そして自分を知ることにもつながる。子を思う保護者の強い思いから生まれ、スタッフがコツコツと築き上げた環境は、「安心できる場」としてこれからも多くの子どもたちを育んでいくことだろう。
(文:吉田 渓、注記のない写真:生野学園提供)
東洋経済education × ICT編集部
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