農業、家、映画、缶詰…アパレルが「畑違い」の領域に進出する訳、もはや「服を作って売る」だけでは限界か?ファッションで培った強みに可能性も


「最初にカーンザを使ったビールを製作しました。カーンザは発芽して1年以内に枯れてしまう1年生植物とは違い、収穫後もそのまま残り翌年も実をつけます。
また、地中に炭素を溜め込むことで環境製造に寄与するとも。マイナスをゼロにするのではなくプラスにするのです。
ふるさとである地球を救うためにビジネスを営むというミッションステイトメントに準じ、農業を通して地球を変革していくことは自然と相対してきたパタゴニアにとってはもはや常識。アパレル業界は、素材がどうやってできているかにどこまで向き合えるかが今後は大事になってくると思います」
サプライヤーとしてエンドユーザーとつながれるパタゴニアは、消費者の意識を変える意味でも重要な存在であることを認識していると、担当者は言葉に力を込めます。
アーバンリサーチ、地方との関わりから得た可能性
1次産業へ照準を合わせるという意味では、アーバンリサーチもまた興味深い企業かもしれません。
現在、アパレル企業として国内では唯一、大阪・関西万博に出展している同社は、「未来に繋がる“すごい”をシェアする」をテーマに、ジャポニズム・スーベニア・テクノロジーの三本柱でブースを展開しています。

サスティナビリティ推進部に所属する宮啓明さんは、こう話します。
「当初、出展とまではいかないまでも、なんらかの形で協力できたらと考えていました。そんな中、公募に関するお話を伺い、出展に対し前向きに考えるきっかけになりました。コロナも明け、アパレル業界としても変わっていかなければいけない、企業としても新たなチャレンジをしていかなければいけないという時に、万博はアーバンリサーチをより多く知ってもらういい機会だと感じています」
なかでも着目したいのは、三本柱の中の“ジャポニズム”です。これは、世界へ日本のよさを発信すると同時に、国内の人々に自分たちの住む国のすばらしさを再認識してもらう側面もあります。
それは、アパレル業界以外の人々とも密接に関わってきた同社ならではと言えるかもしれません。わかりやすいところでは14年ほど前の活動が挙げられます。いまだ多くの人の記憶に残る大災害、東日本大震災に見舞われた年です。
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