農業、家、映画、缶詰…アパレルが「畑違い」の領域に進出する訳、もはや「服を作って売る」だけでは限界か?ファッションで培った強みに可能性も

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2025年夏秋のパタゴニアは、ヘルシーウォーターズプロジェクトをテーマに掲げています。健全な河川や水の重要性を改めて考えるキャンペーンで、その範囲は川周辺の環境はもちろん、内外で生きる生物にまで至ります。

例えば、北海道黒松内町と包括事業連携協定を結び、朱太川流域のダムの撤去に向けたアクションを開始。それにより、サケやマスの遡上を促しています。

パタゴニアの健全な河川や水の重要性を改めて考えるキャンペーンとパタゴニアが制作した映画
2025年夏秋のパタゴニアは健全な河川や水の重要性を改めて考えるキャンペーンを展開(写真左:パタゴニア日本支社、©Whole Universe Association)。パタゴニアは映像制作にも真剣に取り組む。今回は、生息環境や水温の変化に敏感な魚であることから、川の美しさの指標にもされるサクラマスが主役。『ミルクの中のイワナ』でも指揮した坂本麻人監督が今回もメガホンを握る。現在、パタゴニア各店で上映会を開催中(写真:パタゴニア日本支社、©2025Patagonia,Inc)

一方で、売上の1%を環境保護団体に寄付する〈1%フォーザプラネットプロジェクト〉に代表されるような資金面のサポートもこれまで行ってきました。そして今、より力を入れているのが農業です。

パタゴニア日本支社のマーケティング担当者は、いわばそれは自然の流れと語ります。

「最初は、クライミング時に満足できる道具がないから始めたブランド。その中で岩が荒れ始めている変化に気づきます。その流れで、自分たちの遊び場は自分たちで守らなければいけないと環境に対し自然と意識が向くようになりました」

オーガニックコットンに切り替えた訳

そして、ある出来事がより環境へと意識を向けさせられる呼び水になったとも言います。

「以前、ボストンのお店でコットン製品が納品され、それを検品している時にスタッフが体調を崩したことがありました。いろいろ調べてみると綿製品から出ているホルムアルデヒドが原因ではないかとの可能性が浮上したのです。それで、オーガニックコットンへの転換に対する機運が高まりました」

パタゴニアのオーガニックコットンを使った製品
左:リジェネラティブ・オーガニック・サーティファイド・コットン・エッセンシャル・トップ ¥13,200、右:リジェネラティブ・オーガニック・サーティファイド・コットン・エッセンシャル・フーディー ¥14,850/ともにパタゴニア(写真:パタゴニア日本支社)
リジェネラティブ・オーガニック農業
リジェネラティブ・オーガニック農業には、あえて土を耕さないことで土中の微生物の働きを活性化させる不耕起栽培や、異なる種類の作物を順番に栽培し土壌の栄養バランスを保つ輪作などがある(写真:パタゴニア日本支社)

パタゴニアは、1996年からオーガニックコットンへの切り替えを進め、生産者へのサポートも続けてきました。その過程の中で、さらなる理想を追い求めます。

「気候変動への憂いの中でオーガニックコットンを導入するようになりましたが、ただそれだと環境に負荷は与えませんが再生もしない。悪くはないですけど、ベストではないですよね」

そこで着目したのが、温暖化の原因にもなる二酸化炭素を溜めることができるリジェネラティブ・オーガニック農業(環境再生型農業)です。

リジェネラティブ・オーガニック農業は、化学肥料や農薬の使用を避け、土壌の健康や生態系の再生を重視する農業です。今はリジェネラティブ・オーガニック・コットンを推奨し、2030年までに全ての製品を移行させることを掲げました。

さらに、近年では“食”に対しても力を入れています。代表的なところでいうと、カーンザという多年草の作物を使用した製品です。

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