排外主義が強まる時代に、子どもたちに「人権」を教える教員だからできること 人権を学ぶと「誰もが大切で尊い存在」と気づく

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

もし嫌いな人であれば無理に付き合う必要はないけれど、その人を排除したり、差別したりするのは人権侵害』というようなメッセージもあわせて伝えるのはどうでしょうか。人権の基本的な考え方、そして人として享有できる具体的な権利を知ることは、外国にルーツがある人とともに過ごしていく中でも重要だと考えています」

クラスで差別発言が出てきてしまったら……

では、もしクラスに外国ルーツの子どもがいた場合、教員はどのように接するのがよいのか。朴氏によると特別な配慮をしなければならないと身構える必要はないという。

「子どもによっては言葉の壁などが立ちはだかることもあると思います。自分の文化がクラスのほかのみんなと違うことで、疎外感を覚える子どもがいるかもしれません。この先生になら自分の困りごとを相談できる、という信頼関係を生徒や保護者と築くことは何よりも大切でしょう。また、早いスピードで日本社会が変化しています。在日外国人の現状やその人たちを取り巻く環境もどんどん変わっているので情報のアップデートがつねに必要ですね」

ただ、教員がいくら注意を払っていても、子どもたち同士でトラブルを起こすこともある。例えば日本人の子どもが在日外国人の子どもに「外国人は出て行け」など差別的な発言をすることもありえる。

「子どもは悪気なく差別的な言葉を発することがあると思います。そのときは、なぜそのようなことを言ったのか、言葉の背景やその子の考えをきちんと把握し、教員間で共有することがまず大事です。次にどのような社会であれば、クラスのみんなが幸せに暮らせるのか考える時間を持つきっかけにしてほしいですね。

言われた子どもが傷ついているようであれば、その悔しさ、悲しさに寄り添ってあげてください。周りの子どもたちに願うのは共感する力が育つことです。そういうプロセスが多文化共生を育む豊かな教育につながるでしょう。そうして、すべての人の人権が守られるよう、日本社会をよい方向に変える力になってほしい。変わらなければいけないのはマジョリティ側です」

保護者が日本語をあまり理解できない外国ルーツの子どもを受け持つ先生方に、もう1点、朴氏が伝えたいのは、「子どもを通訳にせず、自治体のサポートなどを活用して通訳者を立ててほしい」ということだ。

「家族間であっても伝えづらいことはありますし、家族だからこその葛藤もあるかもしれません。子どもに通訳をさせるのではなく、第三者にお願いするようにしていただきたいです。地域で外国人住民の支援をしているスタッフが強調していました。複数の当事者から子どものときに大変な負担だったと言う声も聞きました」

例えば自分が子どもだったとして、教員が自身の成績の低下について話しているのを保護者に向けて訳すのは、心理的負担になってしまう。もしくは、逆に保護者が自分の家での様子を伝える内容を訳すことも、思春期だと気恥ずかしい。お互いの伝えたいことが正確に伝わるためにも、通訳を依頼したほうが理想的だろう。

同じ社会を生きて、社会をつくる隣人として

朴氏は、「外国人」と「日本人」の二分法で考えることを留保すべき、と指摘する。

「外国人とひとくくりに言うには、今や在日外国人はあまりにも多様です。日本の国籍法はかなり厳格な“父母両系血統主義”なので、例えば、数世代住み続けても外国人同士の親から生まれた場合、出生と同時に日本国籍を取得できるわけではありません。そして第二次世界大戦後の在日外国人は、それまで日本の植民地であった朝鮮半島からの人たちが圧倒的多数であったという歴史から出発しています。また、これまでの在日外国人の人数の推移は、日本の経済や社会の要請に基づいた政策と直結します。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事