13年ぶりに"反省"に言及した石破首相、「戦後80年」で問われる日本の針路と《9月大政局》の行方

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多くの記者団が小泉氏を取り囲んだが、同氏にしては珍しく、記者団の質問には答えないまま無言で立ち去った。だが、その後の農水省での記者会見で「不戦の誓いと、そして国家のために命を捧げた方に対する礼を忘れないこと、このことは重要なことだと考えている」と語った。

一方、小泉氏と同様、2024年自民党総裁選挙に立候補した高市早苗前経済安保相、小林鷹之元経済安保相も参拝した。

高市氏は参拝後に記者団から「参拝は中国や韓国の感情を刺激するのではないか」と問われると、「本来、それぞれの国のために殉じられた方の慰霊は、それぞれの国の国民が自らの心に従って行うものだ。外交関係になるようなことがあってはならない」と、従来の認識を強調した。

また、小林氏は参拝後、記者団に「国、国民、そして平和を守り抜くために全力を尽くす覚悟を新たにしてきた」と語った。このほか、2024年の自民党総裁選に出馬した加藤勝信財務相や、超党派の「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」(会長=逢沢一郎自民党衆院議員)も一斉参拝した。

参政党の神谷宗幣代表は、ほかの同党議員と共に参拝。参拝後に報道陣の取材に応じ、「国の指示もあったが、国のためにみんなを守るために戦い、尊い命を失った方々に感謝と追悼の気持ちを伝えたい。二度と日本が戦争の惨禍にあわないように平和を守る政治をやりたいという思いを伝えた」と述べた。旧日本軍による中国への侵略についてや、政治家による靖国神社参拝に対して批判があることについて記者から質問が上がったが、周囲が遮り、神谷氏も答えなかった。

さらに、日本保守党の百田尚樹代表も靖国神社を参拝。百田氏は記者団に対し、「やっぱり、戦後80年。日本のために、国に殉じるといいますか、国のために戦って命を亡くされた、英霊に手を合わせてきました」と、生真面目な表情で語った。

9月以降の「大政局」にどう臨むのか

終戦記念日前後の各メディアによる特集企画・番組などは毎年、「8月ジャーナリズム」と呼ばれてきた。ただ今年は、戦後80年という大きな節目だったことに加え、トランプ大統領の「アメリカファースト」を前面に押し出した言動で、国際社会の動揺が頂点に達しつつあるのは否定しようがない。

とくに、近年欧米で際立つ保守化の流れが国際社会の緊張・分断につながる中、「唯一の被爆国で、不戦の憲法を持つ日本がどう対応していくのかは、極めて重要」(外務省幹部)なのは明らかだ。

終戦記念日の式辞で13年ぶりに「反省」に言及した石破首相が、自民党内の「石破降ろし」にあらがうべく、内閣支持率の上昇や国民世論の後押しも意識して、9月以降の「大政局」にどう挑むのか。トップリーダーとしての見識・器量が厳しく問われることは間違いなさそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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