昭和30~40年代生まれはなぜ自殺に向かうのか 小田切陽一著

 

著者は公衆衛生学を専門とする医学博士。健康事象の実態把握や原因追究の基礎となる疫学の立場から自殺の実態について分析している。自殺率の他にも、最も多く選ばれる手段が「首つり」であることや、年齢別の自殺の原因・動機の違い、自殺率が最も高いのは秋田県といった地域差、3月から5月にかけて自殺が増加するといった季節変動、性差による男女の傾向の違いなどが、豊富なデータを背景に語られる。

2006年には自殺対策基本法が制定されたが、日本の自殺対策が遅れているのは「自殺は個人の生き方の問題」とされてきたことが大きな要因だと著者は指摘する。自殺は個人の力だけで予防できるほど単純ではないと警鐘を鳴らし、年間40~70人の自殺者が出る青木ヶ原樹海の水際対策などを例に説明している。

また、がん予防のように早期発見のための検診や社会的孤立を防ぐ仕組みを整備するなど、社会の課題として予防対策を講じていく視点が必要だという。

東日本大震災後の2011年5月には自殺者が急増し、同年の4月~6月期には自殺者数が前年を大幅に上回ったことが伝えられている。自殺に追い込まれていくまでには1人あたり平均4つの危機要因を抱えており、それらが連鎖してしまうことで悲劇が生まれる。精神不安の多い現代人なら誰もが手にとる必要がある一冊だろう。

(フリーライター:小島知之=東洋経済HRオンライン)

講談社+α新書 838円

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