子どもにプログラミングを学ばせる真の意義 根本にあるのは、親たちの切なる願いだ

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国内には「TENTO」、「CoderDojo Japan」など同様の子ども向けプログラミング教室が複数開講しており、キャンセル待ちの講座もある。今年7月からは、通信教育最大手のベネッセホールディングスが、なんと幼稚園児向けのオンデマンド講座を開始した。少子化により受験人口の減少に苦しむ大手進学塾も、今後の開拓に意欲的だ。

社会に出た後にムダにならない

従来、「暗い」「オタク」といったネガティブな印象がつきまとっていたプログラミングだが、ここへ来て親たちが、わが子の習い事としてプログラミングを選ぶのはなぜか。最大の理由に、プログラミングを身に付けておけば、社会に出た後にムダにならないということがある。

「アメリカでは、プログラミングができるようになることで仕事の選択肢が増え、高い給与に結びつくと考えられている」と語るのは、アメリカのプログラミング教育に詳しいベネッセコーポレーションEdTech Labの谷内正裕研究員。アメリカでコンピュータサイエンス系の学部を卒業した学生の平均年収は800万円弱と、他学部の卒業生と比べて高いことが分かっている(全米大学企業連合・2015年春)。

低学年のうちからプログラミングを学ぶ小学生の姿も

日本の場合はアメリカと異なり、年収700万円以上のプログラマーは全体の10%にも満たない狭き門だ(『IT人材白書2015』)。それでも、ライブドア元社長の堀江貴文氏、グリーの田中良和社長、「ニコニコ動画」で有名なカドカワの川上量生氏などのプログラマー経営者たちは注目の的だ。

それにプログラマーを極めた世界のIT企業経営者の中には、とんでもない長者が生まれている。たとえば、ITバブルを生き残ったマイクロソフトのビル・ゲイツ、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ、アマゾンのジェフ・ベゾスなど、彼らは「世界長者番付」トップ20(米フォーブス誌・2015版)にランクインしている。

こうした流れを受けて、新卒就職戦線にも変化が起きた。従来、中央省庁、銀行、総合商社などへの就職が「定番」だった東大生による、2014年度入社の学部卒就職先ランキングはDeNAと楽天が15位にランクインしたのである(『東京大学新聞』)。IT企業のおよそ87%が技術者の不足を訴え(『IT人材白書2015』)、サイバーエージェントといった大手ですら半数のプログラマーを入社後イチから育て上げる必要がある。優秀な技術者ともなれば、企業による争奪戦となり、好待遇も期待できる。

今や、プログラミング技術が必要なのはIT企業ばかりではない。スマホやタブレット端末の急速な普及とともに、クラウドサービスの活用によってITビジネスへの投資が低コスト化した結果、大企業の95%、中小企業でも6割が自社ホームページを開設 (経済産業省調べ・2012年)。何らかのかたちでITを利用している企業が圧倒的多数を占めている。

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