イギリス 矛盾の力 進化し続ける政治経済システム 岐部秀光著 ~“目からウロコ”の現代イギリス論
日本で政権交代が行われた2009年の夏、当時の民主党の菅直人代表代行(後に首相)と小沢一郎幹事長が別々にロンドンに出かけた。後の政権運営に活かすために、議院内閣制の母国で「ウエストミンスター・モデル」と呼ばれる政治・行政システムと運用の実態、選挙制度などを学ぶのが目的だった。
日本経済新聞ロンドン欧州総局の記者だった著者は、両氏が面会した政府要人や政治家を訪ね歩き、会談内容を取材した。
以後の民主党政権の迷走を重ね合わせ、「イギリスびいきの民主党の幹部たちは、ウエストミンスター・モデルのシステムを細部まで研究したが、その運用の知恵を学びそこねた。いったい彼らは何を見落としたのだろう」(序章)と書く。本書執筆の出発点の一つとなった。
今夏のオリンピックの開催都市はロンドンだが、日本と同様に大陸と向き合う大国の島国が今、世界の注目を集めている。
EUに加盟しながら通貨統合を拒否してユーロ危機の直撃を免れ、国債の格付けも最上位をキープする。他方、「二大政党政治のモデル」と言われてきたのに、2年前、65年ぶりに連立政権を誕生させた。さらに昨年夏、説明不能のロンドン暴動が発生し、世界を驚かせた。