イギリス 矛盾の力 進化し続ける政治経済システム 岐部秀光著 ~“目からウロコ”の現代イギリス論

「不思議の国イギリス」と著者は評するが、独自路線や「新しい変化」は、賢明な判断なのか、苦渋の選択の結果なのか。ジャーナリストの目と足で丹念に「不思議の国」の謎を探った。

1章の「政治」で与党の指導者が野党時代の束縛を超えて大胆な改革に乗り出すという政権交代の「化学反応」の虚実に迫る。2章の「外交」で「特別でなくなった米国との『特別な関係』」と「欧州であって欧州でない」という姿を、3章の「経済」で英国病から経済再生と快進撃を経て金融危機に至る浮沈を、4章の「社会」で階級、宗教、民族、教育の裏側を、それぞれ追跡・検証している。

浮かび上がるのはグローバル社会でしぶとく生き残る「カメレオン国家」という顔だ。伝統と革新の共存、多面性と変わり身の早さを武器とする「変化の達人」の国の原動力は「矛盾の力」と種明かししている。

今や日本も衰退国と映るが、著者は「150年も衰退を続けているイギリスこそ『衰退先進国』の真打ち」と言い、「しなやかに、したたかに変貌を遂げてきたイギリス」から教訓を探る。「日本人には失敗した人間への敬意が足りないのでは」という現地の人の言葉を引きながら、「失敗を許さない日本のシステムの硬直性と、失敗が前提のイギリスの柔軟性の違いは大きい」と説く。“目からウロコが落ちる”現代イギリス論である。

きべ・ひでみつ
日本経済新聞英文編集部次長。1970年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業、日本経済新聞社入社。金融部、仙台支局、国際部などを経て、アラビア語語学研修。その後、バーレーン支局、ロンドン欧州総局に赴任して、現職に。

日本経済新聞出版社 1890円 197ページ

  

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