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〈書評〉『金融包摂とは何か すべての人々のアクセスをどう保障するか』『静かな退職という働き方』『幸せな方の椅子』

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ブックレビュー『今週の3冊』

 

[Book Review 今週のラインナップ]

・『金融包摂とは何か すべての人々のアクセスをどう保障するか』

・『静かな退職という働き方』

・『幸せな方の椅子 悲しみの底にいるときの心の舵のとりかた』

『金融包摂とは何か すべての人々のアクセスをどう保障するか』ラジブ・プラバカール 著/小関隆志 訳(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)

評者・神戸大学教授 砂原庸介

金融包摂とは、より多くの人々に金融へのアクセスを確保することだ。たとえば貧困に陥った人は、貧困ゆえに信用されず、高い金利を求められがちだ。ジェンダーや人種などを理由に、お金を借りるのが難しくなることもある。しかし、資金を得た借り手が独力で生活を改善できるなら、属性を理由とした金融からの排除は望ましくない。アクセスの拡大は資源の有効利用にもつながるのだ。

金融包摂がテーマなら、一方で金融からの排除を問題視し、他方で包摂のメリットを主張する展開が予想される。しかし本書はそうではない。金融包摂が重要な政策であることを前提に、それに対する批判との健全な対話を試みるのが主要な目的だ。

自己責任の強調と一線を画す金融アクセス拡大への擁護

東洋経済オンラインの愛読者に読んでほしい本を一気に紹介。【土曜日更新】

金融包摂への批判の対象は、個人に投資主体としてのリスクを負わせることだ。その新自由主義的な取り組みは、福祉国家の相互扶助を後退させることにもつながるとされる。

そのような見解からは、金融教育も個人に投資主体となることを促す取り組みだと理解される。そして、個人が過剰にリスクを取った結果引き起こされたサブプライムローンの破綻とその後の危機でダメージを受けたのは一般の人々だとされるのである。

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