【空き家を資産価値UP】築55年木造住宅が新築性能に!? 売却益で住み替えも。「ヤドカリプロジェクト」が示す中古住宅革命 静岡

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「がんばり坂の家の例では、土地を除いた建物の売却額を10割とすると、空き家自体は約1割分のマイナス査定で取得しており、約8割かかった改修費との差し引きで約3割が利益でした。

今回のケースは建築家である私自身が行ったために設計料などは含まれませんが、適切に改修を行うことで築古の空き家の資産価値を向上できることが理解できると思います」(白坂さん)。

夕暮れのがんばり坂の家
街並みに溶け込むがんばり坂の家。半透明の断熱引き戸によって室内の明かりを映し出す(撮影/淺川 敏)

「改修費用は相応に必要ですが、解体費用を払って更地にして売却するより、空き家を再生したほうが収支はよほど良好です。新築同等スペックでも新築相場より多少安く買うことができ、古い家を大切に活かしているということが、買ってくださる方にとっても魅力になると思います」(白坂さん)。

現在、白坂さんの家族は妻の実家がある金沢で購入した空き家を改装した家に住んでいるが、浜松に戻ったら、この竪穴の家に再び住み、金沢の家を売却するまで賃貸などで運用することを検討しているという。

ヤドカリプロジェクト
ヤドカリのように空き家の「住み継ぎ」を通じて住まいのステップアップを目指す「ヤドカリプロジェクト」(画像提供/リージョン・スタディーズ)

このように安価で取得した空き家を改修して居住後に売却し、それで得た売却益を原資にして新たな空き家を取得して同様の営みを繰り返す。ヤドカリが自身の成長とともに新たな貝殻を探すように、空き家の住み継ぎを通じて住まいをステップアップしてほしいとの願いを込めてヤドカリプロジェクトと白坂さんは名付けた。

「空き家」の放置は住宅資産の大きな損失

欧米などでは中古住宅を改修して住み続けたり、売買したりすることは当たり前のように行われている一方、日本ではあまり行われていない。それを示しているのが2つのグラフ(下図)である。図にある青い棒グラフは各年における日米それぞれの全住宅の資産価値(市場評価)の合計額を表し、赤い折れ線グラフは各年までの住宅投資の累計額を表している。

アメリカと日本の比較
国土交通省「中古住宅の流通促進・活用に関する研究会」の資料から抜粋

アメリカ(左)と日本(右)を見比べると違いは一目瞭然だ。アメリカは住宅の資産価値の合計額と投資の累計額がほぼ等しく推移しているのに対し、日本は住宅の資産価値の合計額と投資の累計額が乖離し、2010年ごろには資産価値の合計額は住宅投資の累計額の半分にも満たなくなることが分かる。

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