"内申点で不利"な「不登校の中学生」、ベストな進路を勝ち取る「戦略的高校受験」の秘訣 全日制普通科や通信制に落とし穴、注意点は?

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全日制高校に落とし穴、重要な「卒業できる高校」という視点

では、現状では、不登校生徒は高校選びにおいてどのような戦略を取るべきか。

まず大切なのは、「入学できる高校」ではなく、「卒業できる高校」であるという視点。進学できたとしても、途中で中退してしまっては意味がないからだ。

とくに全日制普通科高校を選ぶ場合は慎重な判断が求められる。実際、3年間で卒業できる生徒と、そうでない生徒に明確な差が出る。

絶対に避けたいのは、定員割れや低倍率を狙って、本来の学力より上の高校に背伸びして進学することだ。無理のある進学で、勉強でついていけなかったり、課題がこなせなかったりで、再度不登校に陥ったという話を聞いている。

進学先は「学力的に余裕が持てる学校」であることが望ましい。入学時に上位3分の1に入れる程度の学力があれば、精神的にもゆとりを持って学校生活を送ることができる。

また、不登校の子どもたちは、フリースクールや適応指導教室など、比較的自由な学びの場で過ごしてきた場合が多い。その反動で、全日制普通科高校に入ると、厳格な生活指導や細かいルールに戸惑い、適応できずに中退してしまうケースも目立つ。

私が相談を受けた過去3年間の中退事例も、こうした指導とのミスマッチが大きな要因となっている。不登校経験者で、全日制普通科高校に進学して問題がなかったケースは、もともと中学にある程度適応していた生徒や、個別のフリースクールではなく集団塾を中心に学んでいた生徒に多かった。

こうしたケースを踏まえ、「合格できるか」ではなく、「ゆとりをもって3年間通い卒業できるか」を基準に高校を選ぶ視点を持つ必要がある。

通信制よりもまず検討したい「定時制高校」

不登校生徒の進路として、まず通信制高校を思い浮かべる人は多いかもしれない。しかし、第一に検討すべきは「定時制高校」だということは、もっと広く知られてよい。

この話をすると、保護者の中には表情を曇らせる方もいる。保護者世代に根強いのは、「夜間に通う」「ヤンキーが多い」「働きながら通う場所」といった定時制に対する古いイメージだ。

だが今、定時制の主な在籍者は不登校経験者である。定時制と通信制を併置する都立一橋高校では、生徒の過半数が不登校経験者だという。私の知人が勤務する別の定時制でも「ヤンキーのような生徒はほとんど見かけず、不登校経験者が中心。皆おだやかで、先生との距離も近い」と話す。

定時制の入試は、ハードルも比較的低い。都立の定時制であれば、学力検査は3教科で実施されることが多い。進路実績も安定している。進路決定率が90%以上の定時制も多く、通信制高校の全国平均(約68%)を大きく上回る。定時制は単に「通える場所」ではなく、「卒業できる場所」として存在感を増している。

最近では、東京都が不登校や高校中退の経験者を対象に設置している「チャレンジスクール」という定時制高校が人気だ。現在7校あり、この春開校した都立立川緑高校の倍率は、最終倍率が2.55倍となり話題となった。その秘密は、学力検査や調査書によらない入試(作文や面接など)をはじめ、柔軟な体制にある。

例えば、午前・午後・夜間のいずれかを選べる「三部制」。午後の部なら13時頃から登校が可能で、朝起きるのが苦手な子や、生活リズムが整っていない子でも無理なく通える。

学びの内容も多様だ。例えば都立桐ヶ丘高校では、福祉・教養、情報・ビジネス、アート・デザインの3系列が用意され、「簿記」「CG」「陶芸」など実践的な科目が学べる。大学進学も可能で、自分の興味や得意を伸ばしながら将来を見据えることができる。

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