"内申点で不利"な「不登校の中学生」、ベストな進路を勝ち取る「戦略的高校受験」の秘訣 全日制普通科や通信制に落とし穴、注意点は?
この斜線措置によって、不登校でも学力さえあれば、トップ進学校の日比谷高校を含むすべての都立高校の門を叩くことができる。
よくあるのが、「少しでも登校すれば成績がついて有利になる」という思い込みだ。不登校生の中には、登校がまったくできない状況から、「午後だけ登校」「テストだけ受ける」といった“五月雨登校”と呼ばれる回復期の段階に入るケースがあるが、実はこうした登校スタイルは、かえって評価上不利になることが多い。
わずかな出席でも内申がつくため、通知表は「1」や「2」の低評価ばかりとなり、都立高校進学に必要な調査書点が大きく下がる。逆に、まったく登校しない状況であれば「斜線措置」が適用され、調査書点の補完によって公平な評価が得られる。
ただし、この斜線措置の運用や理解は学校や教員によって差が大きい。「斜線措置か評定をつけるか選んでください」と保護者に選択を委ねてくれる学校もあれば、「1日でも来れば評価をつける」「斜線は保護者が選べない」と取り合わない学校も。斜線措置の存在そのものを知らないケースもある。
斜線措置に関する対応が各校で統一されていない現状では、学力的に都立高校への進学が可能と見込まれる不登校生徒に対し、「中学校への復帰は控えてください」と助言せざるをえない状況が生じている。
一刻も早く「特別選考枠」の導入と調査書比率の多様化を
こうした内申点を前提とする都立高校の入試制度が、不登校生徒を追い詰めている。「高校で再チャレンジしたい」と希望を持って高校生活を思い描いたとしても、前述のように斜線措置が認められず低い内申点をつけられた場合、不登校生徒は進路の選択肢が著しく限られてしまう。これが今、現場で起きている現実だ。
不登校生徒数が過去最多となる中、制度改革は待ったなしと言える。今こそ都立高校には、調査書点を問わない「特別選考枠」の導入と、調査書点比率の柔軟な見直しを求めたい。
具体的には、一般入試枠の2割程度を、学力検査の得点のみで評価する「特別選考枠」とすべきだ。これは公立の不登校生徒だけでなく、例えば私立中に進んだものの学校が合わず、都立高への転入を望む中学生徒も救われるだろう。一部の私立高では、進学妨害とも取れる極端に低い内申点を出すケースすらあるからだ。
また、発達障害や学習障害など、既存の評価軸に適応しにくい生徒にとっても、現行制度は極めて不利だ。彼らに不登校が多いのも、その力を正しく測る仕組みがなく、入試という一律の枠に押し込められてるからではないだろうか。
さらに制度を硬直化させているのが「換算内申」だ。音楽・美術・体育・技術家庭の4教科の内申が都立高校では多くの場合2倍換算されるため、これらで評価されにくい生徒には不公平が生じる。
都内の不登校生にとって憧れの都立新宿山吹高校は、こうした課題に正面から向き合い、調査書点比率を13%に抑え、多様な背景をもつ生徒を受け入れてきた。ところが、2017年の「制度統一」により、山吹も他校と同じ30%へ引き上げられた。
制度が画一化される一方で、生徒はかつてないほど多様化している。この“逆行”こそ、入試制度の最大の問題だ。先日、私は都民ファーストの会の勉強会で講師を務め、この制度的ミスマッチを訴えた。都議会でもようやく問題意識が芽生えつつある。
入試は本来、排除ではなく選択肢を広げる制度であるべきだ。多様な学びや背景を受け止められるよう、今変わらなければならない。