流暢な英語を話す生徒たち、横浜創英の英語学習は「AI×自律学習」でどう変わったか 「目標設定・メタ認知・手段の選択」を重視

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「複数の学び方」を示し、選べる環境を整える

また、AIツールへの興味が、生徒の学習意欲を引き出した例もある。

「ある生徒は中2までは英語学習に消極的だったのですが、中3になって使い始めたELSAに興味を示し、発音練習に繰り返し取り組むようになりました。その結果、学年末には英語での発表を見事にやり遂げ、春休みには中学の総復習ができる問題集1冊を自主的に仕上げました。自分に合ったツールを選んで学ぶことは、英語学習そのものへの意欲を高めるうえでも有効だと感じます」(若尾氏)

AIを活用した学習はスマホやタブレットがあれば自宅でも取り組めるため、学習意欲の高い生徒が授業時間外にも力を伸ばせるのも利点だという。帰国子女ではない生徒がAIで学習を進め、中学生のうちに高校卒業レベルに当たる英検2級に合格した例もあるそうだ。

教員はこうした各種AIツールでどのような学習ができるのかは伝え、一度はツールに触れる機会を作るが、細かい使い方に関してはとくに説明せず、利用の強制もしない。そうした中で生徒たちは、自然に使いこなしているという。

「どんなに優れたAIでも『これを使いなさい』と強制してしまうと、『自分には合わない』『先生にやらされている』という感覚を持つ生徒もいます。AIはあくまでも学習手段の1つにすぎず、紙の辞書などアナログな学習法も含めて複数の学び方の選択肢を示したうえで、生徒たちが自分で選べる環境を整えることが重要です」(山本崇雄氏)

一斉授業でも、生徒が自分に合った学び方を選べるよう、ペアワークやグループワークも取り入れ、「友達と学ぶ楽しさや効果を実感できる場面も意識して設けている」と若尾氏は言う。

AIで“ズル”が可能になるリスクにどう対応?

一方で、AIを活用すれば、自分の頭で考えずにAIの回答を書き写して課題を終えてしまうといった“ズル”をすることも可能になる。そのリスクにはどう対応しているのか。

「生徒たちには、自らの目標達成のためにどう学べばよいかをつねに考えさせるようにしています。ズルをすることも選択肢の1つですが、それでは自分の力にならないこと、目標を達成するには適切な学びのプロセスを自分で選択する必要があることを理解させる働きかけが大切です」(山本崇雄氏)

そうした自己選択を促すため、同校では各教科において、その教科を学ぶ目的である「個人目標」と試験範囲や教科書などに基づいた「共通目標」をセットにした「目標設定」、自分は何ができて何ができないのかを客観的に捉える「メタ認知」、自分に足りないものを強化するための「手段の選択」という3つのポイントを重視して教員がサポートしている。

「例えば、生徒が『英検3級に合格する』という目標を設定したなら、そのために今の自分に足りない力は何かをメタ認知させていきます。そして、それを強化するにはどんな学びの選択肢があるかを伝えますが、選択するのは生徒自身。長期的な目標としては、英語を使ってどんな人生を送りたいのかを問いかけ、短期的な目標とリンクさせています。主体的に学べたかという学習プロセスを評価する際は、AIツールの学習ログを活用することもあります」(山本崇雄氏)

こうした指導の中、生徒たちがAIの使い方を学び合う姿も見られるという。

「最近では、スマホのカメラを英文にかざすだけで日本語訳が出てくるアプリもあります。その方法で学習していた生徒に対して、別の生徒が『それで自分の英語力が伸びるのかな?』と声を掛けていたことがありました。生徒同士でAIの賢い使い方や学び方を共有できるのも、学校のよいところだなと感じています」(山本響子氏)

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