企業に限らず、各経済主体はフォワード・ルッキングで現在の経済活動を決めるというのは近代経済学の常識であり、将来の成長期待を考慮した結果として合理的に決定してきたとすれば、収奪的という指摘は結果論と言える。
企業が先行きに強気になれないのは、賃上げを要求する家計のサイドにも問題があると考えているからである可能性が高い。企業よりも家計の黒字が大きい状態は続いているため、企業の立場からは、「先に消費をして過剰貯蓄を減らしてくれ」という状況である。
企業の賃上げによってすべて解決するとはいえない理由の一つに、賃上げをすれば企業の利益が削られるという点が挙げられる。その悪影響も勘案した上で、労働分配率を引き上げる是非を考えなければいけない。
つまり、労働分配率が低いことは問題だったかもしれないが、恩恵もあった可能性を考えるべきである。
賃上げを進めることにはマイナスもある
むろん、家計の労働所得が増えていれば企業の売上高が増えるはずだという波及効果もあるだろう。ここで指摘したいのは、賃上げを進めることにはマイナス点もあるということである。
トピックボードAD
有料会員限定記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら