高齢者世代はお荷物どころか、急速に成長している「新興マーケット」。求められるのは「老い方を変えるのを後押しする商品やサービス」だ

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

私は、シルバー・エコノミーという考え方には懸念をいだかずにいられない。高齢化社会を明るいものとして描こうという意図なのだろうが、結局は高齢者を固定観念の枠に押し込め、高齢者をすべて均質な存在と決めつける発想に迎合することになる。実際には、すべての高齢者が似たり寄ったりなどということはないだろう。

いま、さまざまな面で高齢者と若い世代の共通項が増えるという大きな変化が起きつつあるが、シルバー・エコノミー的な発想をすると、この点も見えにくくなる。

シルバー・エコノミーという考え方から脱却すべき理由は、もうひとつある。いま必要なのは、高齢化社会ではなく「エバーグリーン」社会を築くことだ。「エバーグリーン」とは「季節を通して緑の葉をつけ、機能し続ける」常緑植物について用いられる言葉だが、広い意味では「つねにあらゆる局面で新鮮さを失わない」状態をあらわす。

私たちは、長い人生でこれを目指すべきだ。人生が長くなるのに合わせて、健康やその他の重要な要素が機能する期間も長くしなくてはならない。

高齢者のニーズに応えることより重要なもの

エバーグリーン経済の主眼は、これまで高齢者がいだくものと考えられてきたニーズに応えることではなく、私たちが老い方を変えるのを後押しすることにある。

エバーグリーン経済で存在感を増すのは、健康とお金を組み合わせた新しい金融商品、長く健康を維持するのに役に立つ食品や飲料、生涯学習を支援する教育システム、老化科学重視の医薬品、病気の検診とモニタリングとデジタルテクノロジーを重んじる医療、人々が運動して健康を維持するのを助けるレジャー産業、長くなる人生を通じて社会との関わりを強めることを支援する社会起業などだ。

エバーグリーン経済は、人生の終盤だけでなく、人生の全般に目を向ける。そのため、エバーグリーン関連の業種はさまざまな分野に広がることになる。

シルバー関連の業種もエバーグリーン関連の業種も両方が重要だ。しかし、最も規模が大きく、最も価値のある成長産業になるのは、エバーグリーン経済のほうだと、私には思える。

私は、もし自分が認知症になれば、手厚いケアをしてもらうために多くのお金を払う覚悟をしている。けれども、そもそも認知症にならずに済む方法があるのなら、その方法を実践するためにもっと多くのお金を払いたい。そう考えるからこそ、エバーグリーン・エコノミーがシルバー・エコノミーより重要で、大きく成長すると思うのだ。

アンドリュー・スコット ロンドン・ビジネススクール経済学教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

Andrew Scott

ロンドン・ビジネススクール経済学教授。ハーバード大学とオックスフォード大学で教鞭を執った経験もある。ロンジェビティ(長寿)フォーラムの共同創設者であり、スタンフォード大学ロンジェビティ(長寿)センターのコンサルティング・スカラーも務める。共著に、世界的なベストセラーになった『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』などがある。ロンドン在住。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事