愛媛大学「行動変容と組織開発」にまでつなげる、"教職員の能力開発"の緻密さ 教育や運営に密接に関わる「FD・SD」で広く評価

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18歳人口の減少で、大学は淘汰時代に突入している。今後、経営が悪化する大学がますます増えると予想される中で、学生をどう育て、どう成長させるのか、その根幹となる大学の教職員をどう育て、どんな教育を行うのかに本気で向き合わなければならない時に来ている。大学の運営に密接に関わるファカルティ・ディベロップメントとスタッフ・ディベロップメントの取り組みで広く評価されている愛媛大学では、教職員の能力開発をどう行っているのか。教育・学生支援機構の中井俊樹氏に解説してもらった。

これまで愛媛大学は、ファカルティ・ディベロップメント(以下、FD)とスタッフ・ディベロップメント(以下、SD)を全学的に推進してきた。大学はどのような教育を実施すべきなのか、大学はどのように運営すべきなのか、どのような教職員を育成すべきなのかといった大学の重要な課題にFDとSDは密接にかかわっているからだ。

その活動は、文科省から2010年から2030年まで教育関係の共同利用拠点(教職員能力開発拠点)として認定されるなど広く評価されている。また日経HRが、企業の人事担当者に実施した調査では、授業改善に取り組む大学ランキングで全国3位にも入っている(日経HR「価値ある大学 就職力ランキング 2024-2025」)。

ここでは、愛媛大学のFDとSDの定義、行動変容を目指した研修、組織開発を目指した研修、さまざまな情報発信という4つの観点から、愛媛大学のFDとSDの現状を紹介したい。

中井俊樹(なかい・としき)
愛媛大学 教育・学生支援機構教授
専門は大学教育論、人材育成論。愛媛大学の教育の企画、評価およびFD、SDの企画、実施に加え、教職員能力開発拠点の活動として他機関における研修や組織開発支援を担当。1998年に名古屋大学高等教育研究センター助手となり、同准教授を経て2015年より現職。現在、学長特別補佐、教育・学生支援機構副機構長、教育企画室長、教職員能力開発拠点代表者を担当。近著に、『大学教育の国際化』(玉川大学出版部)、『大学FD入門』(ナカニシヤ出版)、『大学の教務Q&A 第2版』(玉川大学出版部)、『カリキュラムの編成』(玉川大学出版部)などがある
(写真:本人提供)

愛媛大学におけるFDとSDの定義

まず、愛媛大学ではFDとSDを以下のとおり定義している。

愛媛大学のFDとSDの定義
<SDの定義>
愛媛大学憲章に掲げる教育、研究、社会貢献、大学運営の各理念の実現と個々の自己実現を目指した、執行部を含むすべての教職員のキャリアの各段階における能力開発の組織的な取り組みの総称(ただし、以下に示すFDの取り組みを除く)
<FDの定義>
愛媛大学憲章に掲げる教育の理念の実現を目指した、授業の改善、カリキュラムの改善、教育・学生支援体制の整備・改革への組織的な取り組みの総称
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