不足する「セキュリティ人材」の育成に挑む国立高専、「サイバー攻撃への技術的対応」から「模擬記者会見」まで実践を重視した教育のリアル

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木更津高専でも同様の傾向が見られると、丸山氏は話す。

丸山氏の写真
丸山真佐夫(まるやま・まさお)/木更津工業高等専門学校情報工学科教授。2018年から高専機構サイバーセキュリティ人材育成事業の拠点校リーダー。専門は情報工学(写真:K-SEC)

「推薦入学の志望動機として、セキュリティに関するニュースを見て興味を持ったと答える受験生が増えています。セキュリティについて学べる学校を探して他県から受験する方もおり、肌感として明らかに興味を持っている中学生は増えていると感じます」と、丸山氏は話す。

その背景について赤松氏は次のように語る。

「今は中学生の多くがスマホを使っています。中学校でもスマホ利用についての教育が行われるケースも増え、セキュリティが身近な問題として捉えられるようになってきました。ニュースなどでランサムウェアやサイバー攻撃によるシステム障害の話題に接する機会もあり、セキュリティに対する認識は以前に比べて大きく変わっていると感じます」

実際に卒業後にセキュリティ専門人材として活躍するケースは増えつつある。木更津高専では、卒業後にセキュリティ企業に就職するケースのほか、情報セキュリティ大学院大学に進学後にセキュリティ企業に就職するケース、インターンシップ先の企業に就職するケースなどもある。

高知高専でも、卒業後にセキュリティ関連企業および企業のセキュリティ部門で働くケースは増えているという。中には海事サイバーセキュリティの研究を目指し、広島商船専攻科に進学する学生もいるなど、学生の関心の高まりうかがえる。

全国のほかの高専でも、K-SECのイベントをきっかけにセキュリティに興味を持ち、セキュリティ企業を就職先として選ぶ学生がいるなど、一連の取り組みが学生の進路選択を後押ししている状況がある。

「高専の学生は1コース40人ほどと定員が少なく、そのうち就職希望は半数なので“供給量”としては大きく増えているわけではありませんが、高専での経験を通して企業の状況を知ることが、セキュリティ分野への就職希望につながっていると感じます」(丸山氏)

課題は教員育成、カリキュラムの見直しも視野

木更津高専は今年度、文部科学省による「大学・高専機能強化支援事業」の採択を受け、2026年度入学者から情報工学科に「AI・データサイエンス情報コース」「セキュリティ情報コース」の2コースを設置するほか、4学科に「プラスセキュリティコース」(各学科10名)を新設して機能強化を図る。

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