保護者のクレームが激減する?新年度に「校長が保護者に伝えるべき」3つの話 事前のプロアクティブな関係づくりに力を

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そういう遠慮があってか、入学式の後に、勤務実態や働き方改革についての話をしている校長は、それほど多くはないようだ。

「はたして、そんなこと言っている場合だろうか?」と私は思う。学校は、保護者のことを気にしすぎ、忖度しすぎではないだろうか。これまで何かとクレームや理不尽な要求に悩まされてきた方も多いだろうから、そういう気持ちになるのもわかるが。

学校が忙しすぎることは、ほとんどの保護者が報道などで聞いている。しかし、自分の学校がどのくらいかは知らない。教職員の正規の勤務時間が何時何分から何時何分までかを知っている人もおそらくごく少数だろう。

そもそも、子どもの在校時間(登校時間から下校時間まで)が、教職員の勤務時間を無視しているという問題もある。校長は、自校の勤務実態を伝えるとともに、休職・離職が増えると教員不足もあって大変なことなどを、率直に保護者に話したほうがよいと思う。

私が講演などをするときに、保護者にも、教職員にもかなり驚かれるデータがある。それは、公立小学校教諭の約4割が深刻な寝不足、不眠症と疑われるとの調査結果だ※1

先生が寝不足で、いい授業ができるだろうか? 子どもたちの声にじっくり耳を傾けられるだろうか? また、教職員を対象とした研究ではないが、睡眠の質の低下は、上司の攻撃性の高さと関連するというメタ分析もある※2。つまり、睡眠不足だと、人はイライラしやすくなったり、怒りっぽくなったりする。教職員の場合、ともすれば閉鎖的な教室空間で、イライラしがちな先生を増やして、いいことはない。不適切指導の温床になりかねない。

こうした話をすると、ほとんどの保護者が、教職員の働き方と健康確保は他人事ではなく、わが子に影響しかねない問題であることに気づく。つまり、働き方を見直すことは、先生たちだけのためでもないし、学校都合を押し付けることでもない。子どもたちのためにも、今の状況はマズイということを共有することが大切だ。

校長先生は入学式の後でこう述べてほしい。「子どもたちの安全を守ることはもちろんですが、教職員の命、健康を守ることも、私の大切な仕事です」と。

※1 堀大介ほか「公立小学校教員の不眠症に関する業務時間分析」、『厚生の指標』第68巻第6号2021年6月。
※2 M.M. Van Veen, M. Lancel, E. Beijer et al. The association of sleep quality and aggression. Sleep Medicine Reviews 59 (2021)

② ここまでは学校はできるが、これ以上はできないという線引き

2つ目は、具体論になる。保護者が疑問に思いそうなことや、クレームに発展しかねないことについて、あらかじめ4月当初に伝えておくことをおすすめする。例えば、中学校などであれば、こんな声が保護者からよく寄せられる。

「うちの子はバレー部ですが、去年までのA先生は面倒見がよくて、技術力もあって、生徒によく慕われていました。練習試合もたびたび開催してくれました。その先生が異動して、今年顧問になったB先生は、ご家庭の事情もあるのはわかるのですが、土日は休みになることが多くなりましたし、技術的な指導もなく、応援してくださるだけです。なんとかなりませんか」

こういう疑問を保護者や生徒が感じるのはわかるが、例えば、以下のように、校長からあらかじめ説明しておいたほうがよい。

「生徒さんの希望をなるべくかなえてあげたいとは思いますが、A先生もB先生もバレー部の顧問として雇用されているわけではなく、体育科や社会科の先生としてです。なので、当然、指導力に差はでてきます。部活動については、生徒は楽しみにしているし、子どもたちの成長に資することはよく理解していますが、正規の教育課程とは別の、+αの課外活動という位置づけなので、できる人ができる範囲でしか、指導はできません。親御さんにとってのPTA役員に似た性格のものになります。

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