ミッションは何か?多額のコストに見合う「大学のDX」進めるのに必要な視点 学生一人ひとりの成長を最大化するために

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「例えば、学生募集の状況を、学長などの経営陣が把握しておくことは非常に大事だ。現時点でどれくらいの志願者が集まっているのか。学部・学科ごと、出身地ごとの出願状況ではどうか。出願者たちの高校での成績は。併願状況は。昨年同日比はどうか……などだ。アメリカの大学業界ではData Warehouseと呼ばれるシステムによって、担当部署に問い合わせずとも、学長が手元でこれらの情報に、瞬時にアクセスできる仕組みが広がり始めている」

20年近く前の話です。まさに大学運営のDXですね。当時の私は、日米のあまりの違いに衝撃を受けました。今なお日本ではシステム化どころか、担当部署に問い合わせてから返答が来るまで数日かかる大学もあるはず。日本の大学業界は20年も後れを取っています。

ただ、ではこのシステムを現在の日本の大学に導入すればよいかと言えば、それは違うのだと思います。大切なのは、データに基づいた経営判断を、学長などの責任者が行えるかどうか。DXによってもたらされた情報を生かせる体制があってこそのシステムです。マネジメントの仕組みを整えなければ、こうしたシステムは効果を発揮しません。

大学のDXには、さまざまな期待が寄せられているようです。「授業を社会人に配信できれば収益チャンスに」「遠隔地や海外の学生も顧客にできる」なんて意見も。ただこれらも、各大学がそうしたマーケティングにどれだけ力を注ぐかにかかっています。授業を公開すればすぐ使われる、というものではないでしょう。各大学の本気度が問われるところです。

DX推進は避けて通れません。教育の個別最適化によって、学生一人ひとりの成長を最大化する。業務の効率化や省力化を進めることで、これまで実行できなかった新しい取り組みに着手できるなど、未来の学生たちに与えるメリットも大きいはず。どのようなDXをいつまでに進めるのか。ぜひ各大学のミッションに合った施策を検討していただければと思います。

(注記のない写真: kou / PIXTA)

執筆:進路指導アドバイザー、追手門学院大学 客員教授 倉部史記
東洋経済education × ICT編集部

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事