低迷するドイツ経済にとって財政拡張路線への転換は吉なのか、凶なのか。

ドイツは今や、防衛フィーバーに沸いている。いささか品のない表現だが、まさにフィーバーである。
事の発端は、アメリカとウクライナの両首脳の会談が物別れに終わったことにある。孤立主義外交路線を突き進むトランプ大統領の下、アメリカがウクライナ支援から手を引くとともに、北大西洋条約機構(NATO)への関与も弱めようとしている。
アメリカがNATOへの関与を弱めるなら、ヨーロッパが自らの手でロシアと対峙しなければならない。そのためには、防衛体制を急速に強化する必要があり、防衛産業の活況が予想される。
こうしたストーリーの下で、ドイツのラインメタルやスウェーデンのサーブ、フランスのダッソー・アビアシオンといった防衛関連株の株価が急騰した。
実際、欧州連合(EU)の首脳陣たちが防衛費の増額に関してさまざまなメッセージを出したことも、防衛株の急騰につながった。急騰の直前には、欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は、防衛支出に関しては財政赤字を名目GDP(国内総生産)の3%以内と定めたEUの財政運用ルール(SGP)から外すことを提案したところだった。
それに加えて、フォンデアライエン委員長は、各国の防衛支出の拡大を支援するための特別基金を設ける構想を提案した。あらゆる手で防衛費を積み増し、防衛体制の強化を図らなければならないという決意の表れといえよう。裏を返せば、これはEUや英国、カナダといったNATO加盟国が、トランプ政権に対して深い不信感を抱えたことの表れでもある。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら