"いい先生にしか務まらない学校"に疑問、「宿題・テスト・通知表」廃止を校長の挑戦 業務分掌や学年人事も見直し、常識を覆す改革
業務分掌や学年人事は教員自身で話し合って決める
長井校長が思い描く未来の教育のあり方。それは、子どもたちが自ら興味を持って課題に取り組む姿勢を育むことだ。例えば今後は、自由学習時間を設けて、子どもたちが好きな場所で自分のペースで学べるようにするなど、子ども主体の学びの環境づくりに向けた構想を進めている。
その前段階として、まずは教員が「こうしていきたい」という主体的な創意工夫を実現できるよう、長井校長は裁量の範囲内で評価制度や管理体制を見直してきた。組織改革では従来の業務分掌を廃止し、教員の主体性を重んじる体制に変更した。
「校長や管理職が一方的に教員の役割を決めることはやめました。これまで、各学年に生活指導担当と教務担当を配置して、役割を細分化させていました。しかしこれは『上からの締め付け』だと思い、教員自身が自分の得意や興味に合わせて役割を選べるようにしたのです。この役職には何人必要か、そもそも必要なのかというところから、先生たちが話し合って決めています」
さらに2025年度からは、学年人事を校長が決めるのもやめるという。チーム担任制を導入し、担当学年や担当クラスは教員の希望を生かし、話し合いで決める。これも教員の主体性を尊重し、現場で協力し合いながら柔軟な学校運営を実現するための布石だ。
「この先、教員の役割は子どもたちの“支援者”や“伴走者”に変わらなければいけません。そのためには、上の指示から解放され、教員同士が子どもたちのために協働する仕組みが必要です。よく校長会で、『長井さんだから思い切った改革ができる』と言われますが、一歩踏み出せば意外と難しいことではない、ということは全国の校長に伝えたいです。“出る杭になりたくない”意識もあるでしょう。しかし私はそれよりも、目の前で子どもが授業に集中できていない現状を、その子の特性や教員のせいにしたくなかったのです」
子どもの興味関心、得意不得意、成長スピードは一人ひとり異なる。その多様性に寄り添い、時に励まし、時に導き、時に一緒に悩みながら子どもたちの成長を支えることが、未来の教員に求められる役割なのかもしれない。長井校長の挑戦は、教員と子どもたちが共に成長し、互いの可能性を最大限に引き出す未来の教育システムを築く、画期的な試みと言えるだろう。
(文:末吉陽子、注記のない写真:Graphs / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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