トーンダウンする一方で、習近平氏が「4期目への成果」として台湾問題の解決を進めるとする説にこだわる専門家はなおいる。彼らは台湾の政府が実効統治する離島に目を向けている。
台湾の政府は、中国大陸沿岸部や南シナ海にある島嶼を実効統治している。金門、馬祖、東沙諸島などだ。3期目続投がかかる2022年には、台湾問題の成果として東沙諸島を奪取するだろうと一部の「専門家」は警鐘を鳴らした。
だが、中国は行動に移さなかった。それが今度は「2027年に本格的な台湾侵攻は不可能だろう」という評価と重なり、台湾側が実効統治する離島を1つでも奪うことで、台湾統一に向けた前進とアピールするだろうと再び一部の「専門家」が警鐘を鳴らす。
トランプならば台湾に領土割譲を迫るのか?
彼らの主張にはトランプ氏の存在も影響している。トランプ氏はウクライナに領土割譲を受け入れさせることで、停戦を実現させるという観測が飛び交う。また「アメリカは領土を拡大し、新たな地平に国旗を掲げていく」と述べ、領土拡張に意欲を示した。具体的にグリーンランドの買収、パナマ運河を取り戻す、カナダはアメリカ51番目の州になるべきだ、などと発言している。
このような姿勢からトランプ氏ならば、他国の領土拡張も容認しかねないとの考えが広がる。台湾海峡の平和と安全を維持するため、台湾の政府に対し、東沙諸島や、金門、馬祖を中国に明け渡すことを迫るだろうとの見通しが出てきてもおかしくない。結果として2027年侵攻説であっても、可能性が否定できない「領土割譲」案であっても、台湾の政府が実効統治する離島に注目が集まる。
とはいえ、よく考えるべきことがある。台湾海峡の分断からすでに75年も経つ。にもかかわらず、なぜ中国は、中国大陸沿岸部の島嶼を奪還せず、台湾の政府による保持を許していたのか。
金門や馬祖は、1949年の分断後、内戦の最前線として「戦地」に指定された。金門では、1949年、1954~55年、1958年に激戦が繰り広げられたことはよく知られている。1958年末以降は、主に宣伝弾を用いた砲撃戦が1978年末まで続いた。「戦地」の指定が解除されたのは1992年のことである。それから3年後、軍事最前線の金門と馬祖が観光地として開放された。
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