なぜあの学校や自治体はうまくいく?苫野一徳が語る「学びの構造転換」超秘訣 「何のための教育か?」見落とされがちな本質論

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「学年ごとの指導要領の弾力化」と「標準授業時数の撤廃」を

――現行学習指導要領の課題や、次期学習指導要領に期待したいことについてお聞かせください。

学習指導要領は、教科を体系的に教えるためのものだと考えられてきましたが、私は「自由」と「自由の相互承認」を実現するためのツールだと捉えています。そのため、子どもたちにどういう力を保障することが自由につながり、自由の相互承認の感度を育むことにつながるのかという観点から、学習指導要領の内容を改めて考え直さなければいけないのではないかと考えています。

カリキュラムオーバーロードなどの課題もありますが、方向性として「主体的・対話的で深い学び」はとてもよいコンセプトだったと思っています。それを実現するためには、「学年ごとの指導要領の弾力化」と「標準授業時数の撤廃(もしくは弾力化)」が必要です。個別最適な学びを掲げる以上、この2つの実施は当然のことだと思っており、次期学習指導要領に期待したいところです。

これが実現されると、自由進度学習もほぼ障壁がなくなるはずです。小学校なら3年生が5年生の内容を学んだり、5年生が3年生に戻って学び直したりすることもできますし、自分のペースで学ぶことができるでしょう。

――これからの教育を担う現場の先生方にメッセージをお願いいたします。

日頃から「そもそもこれって何のためでしたっけ?」を口癖にして学校の文化にしていただきたいです。人は問われると考えますので、「何のためだったっけ?」と考え始めます。これが浸透していくと「本質を問い合う文化」ができ、より本質的な教育実践ができる組織になっていくはずです。

また、対話も「そもそも」の部分をベースにすること。例えば「なぜこんなことをやらなければいけないのか?」という業務があった場合、「何のためか」という部分に立ち返ると何が必要かを合意しながら変えていけますし、本質的に意味がないと確認できれば業務を削減できます。よく先生方は対話する時間がないと言われますが、実は対話をする時間を作るほうが働き方改革には効果があるんですよね。「そもそも」を意識すると、風通しもよく、働きやすい職場になっていくと思います。

新任の方も新年度は慌ただしくあまり考える時間がないとは思いますが、表面的なことに追われると疲弊しますので、ちょっと立ち戻って「自分はどんなふうに子どもたちと関わりたいんだっけ?」といったご自身の「そもそも」を大事にしていただきたいなと思います。

(文:編集部 佐藤ちひろ、注記のない写真:ペイレスイメージズ1(モデル)/PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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