退路を断ったほうが勝てると自分を励ます--『私が弁護士になるまで』を書いた菊間千乃氏(弁護士)に聞く
──4年ごとに内省的に自分を見直した……。
それでも、日々の仕事に流される。だが、オリンピックのときに、努力とその成果をはっきり突き付けられショックを受けた。特に柔道の「やわらちゃん」がそうだった。銀、銀ときて、屈せずについに金メダルを取ったのを目の前で見て、自分はこの4年何をやっていたのかと考え込んでしまった。最初はあくまでマスコミ人の付加価値として、法曹資格が取れないかと考えたのだったが。
──まず、夜学に通っています。
今でも、安易に会社を辞めるべきではないと思っている。私自身、後悔したこともあった。ただ、動こうという気持ちを持っているだけでも、今の状態で満足している人とは違うことになる。もちろん、そこでもし動いたのであれば、動いただけで、その人の周りに風が起き、大きく変わっていく。動く自分、あるいは動こうと思う自分を評価して、動こうと思った自分はなぜそうしようとしたのか、自問自答してみることだ。私は思い切って動いて、今が動きにくい時代だからこそ、あえて動く、退路を断ったほうが勝てると、自分を励ましながら進んできた。
──思い切って退職しました。
何かを得るためには何かを捨てなければならないと、私のロースクール(法科大学院)の先生がおっしゃっていた。何もかも全部欲しいというのは無理だと。勝ち取りたいと思う弁護士の資格には、今までのキャリアを捨てるだけの価値がある。だから今までの生活を全部捨てた。逆に、思い切ってそれができれば、必ず成功していくのではないかと思う。