生成AIでアップルも頼る最強の裏方企業「AWS」 「カスタムシリコン戦略」を強力に推進

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NVIDIAのGPUの代替として注目を浴びているAWSのカスタムシリコン「Trainum2」は、同性能なら低コストで利用できることが強み。100円玉と並べて大きさを比較(筆者撮影)

ただし、ネットワークカードに関しては他社製から自社製品への移行は比較的簡単なのだが、CPUやGPUに関してはいくつかのハードルがあってまだまだ大多数は既存の半導体メーカーの製品だ。CPUでいえば、AMDやIntelのx86プロセッサーが、GPUで言えばNVIDIAのGPUが圧倒的で、AWSが投入しているArm CPUの「Graviton」、GPUの替わりにAI学習を行う「Trainum」はいずれもAWS内のシェアでも大多数にはほど遠い状況だ。いずれも課題はソフトウェアの互換性で、新しい開発キットなどを投入しているものの、まだまだ既存の半導体メーカーのソリューションへの支持は強い状況だ。

ただし、高まるばかりの生成AIのニーズが市場を変えつつある。例えば、生成AIの学習に必要なNVIDIAのGPUは需要に対して供給が追いついていないことが近年指摘されており、それに伴って高止まりになっているコストに対する指摘も強くなっている。それに対して、AWSが提供する「Trainum」はAI学習を行う時の消費電力とコストが大幅に少なくなるのがメリットで、NVIDIA GPUの代替として今注目を集めつつある。

re:Inventで登壇したアップルマシンラーニング・AI上級部長のビノット・デュピン氏。アップルのさまざまなサービスに生成AIが活用されており、その裏ではAWSのカスタムシリコンが活用されている(筆者撮影)

IT業界における“縁の下の力持ち”的存在に

その恩恵を受けるのは、AWSの顧客企業だ。今回のre:Inventにはその顧客代表としてアップルが呼ばれ、GPUに替えてAWSのカスタムシリコンを活用するメリットを説明している。アップルマシンラーニング・AI上級部長 ビノット・デュピン氏は「従来と比較して50%の効率を改善することができた」と説明し、それを活用していくことで、アップルが同社のiPhoneなど向けに「Apple Intelligence」と呼んで提供している生成AIのソリューションを50%高効率で実現できると説明した。

ここでいう高効率というのは、「低コスト」と置き換えてよく、アップルのように巨大な規模で一般消費者に生成AIを提供する企業にとっては大きな意味があるのだ。従来のようにGPUだけのソリューションから、Trainumなどに置き換えていくことで、規模を拡大しながらも生成AIの実現にかかるコストを抑えることができるようになる。

このように、AWSは、Amazonやアップルといった巨大IT企業が生成AIを活用したサービスを実現するインフラとして頼っており、言ってみればIT業界の縁の下の力持ちという存在だ。その意味で、同社のカスタムシリコンビジネスには高い将来性があり、今後さらなる発展が期待できる半導体ビジネスの1つと言って過言ではないのだ。

笠原 一輝 テクニカルライター

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かさはら かずき / Kazuki Kasahara

PCのライターとしてキャリアをスタートし、現在はPC、スマホ、自動車、AIの半導体などを中心に取材して幅広い媒体でニュース記事や解説記事などを執筆している。

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