次期学習指導要領「増やさない」方針、「先生の業務の抜本見直し」にも着手を 学校は何をするところ?教員のコア業務とは?

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関連して、財務省も英国の例を参考に、もっと学校や教員から仕事を切り離せと提案しているのは、このⅢの業務でいま教員がやっていることはたくさんあるからだ。前述した掃除なども、賛否はあるが、私はアウトソーシングでよいと思うのでⅢに入れた。

Ⅳは、学校の役割は維持・拡大しつつも、教員がやることは減らしていく方向のもの。これもいろいろある。例えば、給食指導というのは、小学校の先生に聞くと、もっとも難易度が高い仕事の1つだ。誤飲リスクやアレルギー対応もあって、命にかかわりかねない。やけどなどの事故もある。美味しい給食は楽しい時間である一方で、児童同士でトラブルのもとにもなりやすい。

小学校教員から見れば、給食をボランティアなどに任せるのは考えにくいことだ。だが、これは教員免許が必要な業務ではないし、上記のとおり難易度は高いとはいえ、教員以外でもできないことではない。

私は、こうした給食時の支援なども含めて、教科学習ではないところは、生活支援、生徒指導専門スタッフを日本でも設置・配置していくべきではないかと思っている。学習の評価に関わらないところで支援する大人がいたほうが(「ななめの関係」と言われる)、子どもも話しやすい場合もある。

また、中学校と、とりわけ高校で重たいのが進路指導だ。だが、高校教員が就職などの相談にのるなどしても、必ずしもさまざまな仕事に詳しいわけではないし、キャリアコンサルの専門性が高いわけでもない(学校の先生しかやっていない人も少なくないし、多少民間経験などがある人もいたとしても、その程度の経験で生徒の就職支援がうまくいくとも限らない)。

似た話として、精神的につらい保護者に寄り添って話を聞くといったことも、今は事実上、学校の先生が一部やっているが、教員はカウンセラーではない。こうした相談支援業務の多くも、もっと専門職と分業していくべきだ。

ここでは書き切れないが、この2軸で分類しにくい業務もある。一例をあげれば、いじめ対策がある。私は、家庭の管理下のいじめ問題も学校に持ち込まれている現状は変えたほうがよいと思っている。つまり、学校と教員の役割の縮小だ。同時に、学校が認知したいじめ問題の対応が遅かったり、重大事態として認定しなかったりする問題には改善が必要だ。これは学校と教員の役割を拡大、もしくは生徒指導の専門職を入れることなどが考えられる。

実現可能か?という批判はまっとうだが、絵を描く意味もある

ここで述べたことは、各論、具体論になればなるほど、賛否両論あると思う。また、「絵を描くのはいいが、本当にできるのか?」「分業しろと言われても、そんな人はいないよ」という疑問、反論が学校現場からも聞こえてきそうだ。

とはいえ、ここ数年の文科省などの政策をみても、「働き方改革は一丁目一番地」「残業時間(時間外勤務時間)を削減する」などとは言いつつも、ビジョンと具体方針(戦略)が十分に描けていない部分があったのでは、と思う。

「学校は何をするところなのか」「教員のコア業務は何なのか」などの将来像について、具体的な業務まで落とし込んで再設計して、必要な人材の育成や予算獲得のためのロードマップを描く必要がある。

そこには官僚だけでなく、政治家の役割も大きいと思うし、学界などももっと提言したほうがよいと思う。次期の学習指導要領の検討でも、各教科の細かな部分の改訂や学習評価の方法などに終始せず、そもそも「学校はどこまで何をするの?」というところから深めてほしい。

(注記のない写真:Fast&Slow / PIXTA)

執筆:教育研究家 妹尾昌俊
東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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