国立附属小教員語る「親との歪な関係」、高度な依存で重圧と業務過多に苦しむ 他校の再現性ない運営で教育実習生の夢も壊す

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保護者からは、学力向上や授業の質はもちろん、例えば毎日のノートチェックや写真付きの日報も求められている。子どもを通して耳にした、授業中の教員のちょっとした発言にも、納得できないとすぐに問い合わせが入るという。とくに子ども同士のトラブルの場合、相手の児童にも話を聞かなくてはならず、休み時間がすべて潰れる日も少なくない。

「児童も大人びているので、つねに見張られているようで片時も気が抜けません。公立小とは比べ物にならないほどのプレッシャーがあります」

休憩なしの12時間超勤務、持ち帰り残業も常態化

保護者への日報作成や個別連絡に対応していると、放課後の時間はあっという間に過ぎていく。1日の法定労働時間は8時間だが、朝8時頃から夜8時頃まで、毎日12時間働いても仕事は終わらない。月20日間勤務として、時間外労働時間は月80時間だ。

「小学校ならどこでもですが、休憩時間はほとんど確保できません。毎日休憩なしで12時間働いているのに、さらに家に仕事を持ち帰っています。これは私だけでなく、ほかの先生も同じです。大事な授業準備をする時間が取れないので、スマホで資料を見られるようにして通勤時間に考えたり、土日に先取りしたりしています」

明らかに過大な業務量だが、校長や教頭といった管理職に改善の意思はないそうだ。遠藤さんは心身のバランスを崩して適応障害と診断されたため、その報告とともに管理職に長時間労働の是正を訴えた。しかし回答は、「全国的な問題で、すぐには解決できない」というものだったそうだ。

「がっかりしたのは、文字として記録に残るメールにもかかわらず、管理職が『改善はできない』と答えたことです。違法な長時間労働の常態化を認識しておきながら、対応はしないと宣言できてしまうほどの意識というわけです。民間企業であれば、環境を整えなければ離職が進むと危機感を募らせるはずだし、そもそも休憩なしで長時間働かせることもほぼないでしょう。なぜこんなにも一般常識とズレているのか、理解に苦しみます」

この実態が、現代深刻な社会課題となっている「教員不足」にも大きく影響していると遠藤さんは指摘する。

「国立小は、教員を志す学生が教育実習に来る場でもあります。長時間労働や過大な業務に苦しむ現場教員を目の当たりにしたり、配布されたスケジュールに休憩時間の記載がないのを見れば、学生が将来に不安を感じるのも無理はないでしょう。教育系国立大学附属校の教育実習が厳しいのは有名ですが、本来全国の学校のモデルとなるべき国立小を経て、教育学部の学生が教員を諦めているとすれば、教員不足の原因の1つは国立小にもあると私は思ってしまいます」

実際、学生の教員離れは深刻だ。高知県では、小学校教員採用試験合格者の7割超が採用を辞退したとして大きなニュースとなったが、他の自治体でも採用辞退は相次いでいる。東京都の2024年度の小学校教員採用試験の倍率は1.2倍と、受験者自体も減少した。

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