現在、兵庫県宝塚市、奈良県磯城(しき)郡の3町(三宅町・川西町・田原本町)と計4つの自治体において無償でサービスを提供している。ミツカルセンセイを活用して学校とのマッチングを図る窓口は、各自治体の教育委員会の指導主事が担っている。
ミツカルセンセイの登録者数は、著名な教育関係者のSNSなどでのシェアも後押しとなり、サービス開始から2カ月弱で300名ほどが集まった。全国から登録があり、半数が兵庫県内、奈良県内を占めるという。
登録者は、子育てやパートナーの転勤などを理由に教職を離れていた女性など、30~40代の教員経験者が多い。また、教員免許を保有している人が9割に上る。「民間企業に就職して現場経験はないけれど、教員になるのが夢だったという人も一定数いらっしゃいます」と小谷さんは話す。
すでにサービス経由で複数の応募があり、1名が採用に至っている。今後は潜在教員に限らず、教員免許を必須としない求人も増やしていく考えだ。現状でも教員免許の保有を問わないALTの講師の求人はあるが、「スクールサポートスタッフや部活動支援員などの求人も増やして人手不足を解消したい。実は支援員から常勤講師になる人も多いので、結果的に潜在教員の掘り起こしにつながる可能性もある」と小谷さんは話す。
実績はこれからというところだが、すでに都道府県単位からの問い合わせもあるといい、来年度からは自治体と年間契約を結び、職種を保育士などにも広げ、本格的にビジネスを拡大していく方針だ。
自治体や学校のマンパワーに頼らない仕組みを
小谷さんは、実は決まっていた就職を辞退して休学し、クラウドファンディングや財団法人の寄付などで計250万円を集めてこの事業に専念している。これまでスポット的に他者の協力を得つつ、基本的にはサービスの開発・運営から自治体への提案まですべて1人で行ってきたが、「これからは仲間集めやさらなる資金調達が課題」だと考えている。サービス自体も「まだまだブラッシュアップが必要」だと小谷さんは語る。
「例えば、常勤1名の欠員を非常勤複数名で埋めるのを認める都道府県もありますが、法的には原則として常勤で埋める必要があります。そうした何らかの規制によって非常勤を自由な形で活用しにくい実態があるため常勤の募集が多いのですが、『非常勤希望者でも興味を持ってくれているなら一度話をしたい』という学校もあります。そのため、『週1~2日の非常勤なら興味がある人』などのボタンの実装や、登録者の人柄がわかるような工夫もしていきたい。そうした細かいニーズをどんどん汲み取って自治体や学校のマンパワーに頼らない仕組みをつくり、少しでも教員不足の解消ができるようがんばりたいと思います」
(文:國貞文隆、注記のない写真:逢坂憲吾撮影)
東洋経済education × ICT編集部
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