「またトラ」でサイバーセキュリティ政策にも影響 安全保障と経済活動のバランスは簡単ではない

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イースタリー長官の後任人事は決まっていないが、トランプに近い人間の場合、ソフトウェアのセキュリティよりもアメリカの市場競争力アップを優先させる軌道修正が入るかもしれない。

小さい政府と安全保障をどうバランスさせるか

しかし、サイバーセキュリティの問題は、国家安全保障にもかかわる。市場原理を優先させた場合、テロ対策や国家支援型サイバー攻撃への防御・対抗に悪影響が避けられない。

セキュリティ・安全保障と経済活動をバランスさせるのは簡単ではない。トランプ政権では、産業界には規制緩和や優遇措置という「アメ」で支持・支援を集めつつ、有事の際の規定や罰則(ムチ)で政府協力を得ようとするだろう。

グーグルやアップルは、サイバー犯罪、サイバーテロの捜査において、必ずしも協力的ではない歴史がある。前述のスパイウェアの問題でも、ペガサスがiPhoneを標的としたマルウェアであるため、アップルはスパイウェアビジネスには否定的な立場をとっている。犯人から押収したiPhoneのロック解除を、裁判所の令状があっても拒否したこともある。

つまり、サイバーセキュリティについても、経済活動や市場活動はなるべく制限せず市場を活性化させることで、産業界の支持を確保する。その一方で、有事や重要政策では政府によるガバナンスを利かせるという戦略が考えられる。

この場合、規制緩和とガバナンスのバランスがとれていればよいが、右翼的な政策に寄ると、見た目は自由主義経済のセキュリティ政策でありながら、中身は中国・ロシア並みの統治政策、国家主導型のサイバーセキュリティ政策になる危険性がある。

東洋経済Tech×サイバーセキュリティでは、サイバー攻撃、セキュリティーの最新動向、事業継続を可能にするために必要な情報をお届けしています。
中尾 真二 ITジャーナリスト・ライター

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なかお しんじ / Shinji Nkao

エンジニア、アスキーの書籍・雑誌編集、コンピュータ技術書籍の翻訳や企画出版を行うオライリー・ジャパン編集長を経て独立。現在はセキュリティ、自動車、教育関連のWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。

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