「またトラ」でサイバーセキュリティ政策にも影響 安全保障と経済活動のバランスは簡単ではない
もともと民間の研究から始まったインターネットは、現在でも民間主導の標準体制のもとで機能している。
IPアドレスやドメインなどのリソースを管理する枠組みは存在するが、全体を統括管理する主体は存在しない(国際電気通信連合〈ITU〉や電気電子学会〈IEEE〉といった通信・電気にかかわる国際規格とは異なる)。インターネットに特定の国や機関が介入すべきではないというのが、本来のインターネットだ。
なお、インターネットはDARPA(ダーパ:国防高等研究計画局)の研究から始まっており、軍事目的だったという説がある。間違いではないが、DARPAは国防総省の外郭組織ではあるが予算執行に対して独立した権限を持ち、軍主導で研究を行う組織ではない。
国防総省はDARPAに自由に研究させ、その成果で利用できるものがあれば国防に役立てるというスタンスなので、軍事目的のためインターネットの研究を進めたというのは話の順序が逆だといえる。
サイバーセキュリティは、コンピュータ技術およびインターネットの発達によって生まれたものだが、自由なインターネットと相反する部分がある。
発電所や交通インフラ、金融機関、病院などに対するハッキングやサイバー攻撃、あるいは詐欺や犯罪行為は、個人の自由や権利より公共の福祉・公益によって制限されるべきだろう。
アメリカでは、前回のトランプ政権時の2018年に、アメリカ国土安全保障省(DHS)の外局としてCISA(サイバーセキュリティおよび社会基盤安全法省庁:Cybersecurity and Infrastructure Security Agency)が組織され、主に重要インフラのセキュリティ政策および対策を統括している。
トランプ政権でも基本路線は維持されるだろうが…
2025年からのトランプ政権でも、この基本路線は維持されるだろう。しかし、政策レベルではいくつかの影響が指摘されている。
まず、共和党は保守政党であり小さな政府を是とする。各州の独立性を尊重し、連邦政府による全体統治は、国防など必要最小限にと考える。これは主に産業界の思惑とも一致する。
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