「頭がいいから、あなたは医師になりなさい」ではなくて、まず子どもたちに自分を取り巻く社会に興味を持たせて、次に「どうやったらこの問題を解決できるのだろう?」と自問させる。そこから、それぞれ、宗ちゃんの場合だったら『医師』『政治家』という職業でしたが、そうやって自分の目指す職業を見つけて、そのためには「じゃあこの勉強をしよう、こんな経験を積もう」と人生を作っていく。逆から夢を見るのです。
「将来、何になりたい」という夢には自分以外の誰かのためという「何のため(社会性)」があるんですね。社会性のある夢の見方をする子どもが増えれば増えるほど未来はよりよくなっていきます。
母がインストールしてくれた「愛のプログラミング」
重子:そんな夢を見る力を育んだ宗ちゃんのご家庭は、どんな教育方針だったのですか?
今枝:父親はサラリーマン、母親は、三ヶ日でみかん農家の娘として生まれた元教師です。ごく普通の家庭ですが、僕のことをとても愛してくれたし、自己肯定感を育んでくれたというのはすごくありますね。本当に小さいときから、何か目標を立てて、うまくいったらすぐ褒めてくれました。自分が目標を立てる、頑張って達成する、めっちゃ褒められるという、自己肯定感をマックスにするような教育を受けました。これは、多分お袋が僕に施した「愛のプログラミング」です。
重子:愛のプログラミング。いいわね。やり方を指示したり、認知的な能力(知識)を無理やり入れるのではなくて、見守っているのが素敵です。

文部科学部会長、エンジン残す次世代自動車/スタートアップ議連事務局長、衆議院議員
中学時代に医療崩壊を実感し解決できる国会議員を志す。名古屋大卒の医師から、28歳で最年少の国会議員に。33歳で最年少の財務大臣政務官、予算委員会理事、コロナ対策本部 事務局長を経て、最年少39歳で第49代 文部科学副大臣に就任。現在は、文部科学部会長、子育て支援議連 事務局長の若手改革派として、責任ある積極財政を推進
今枝:そうですね。お袋も教師だったので、基礎的な子どもの育み方についての素養があったんでしょう。勉強についても、嫌いじゃなかったのでそれなりにやっていて。ここでも目標を立てる、頑張る、褒められるという状況だった。加えて、家の中の会話も多かったですね。うちの両親は社会問題とかそういう話が好きで、家庭で社会問題について、普通にしゃべるんですよ。僕もやっぱり背伸びしたい年頃なので、一所懸命その輪の中に入って話して。
重子:それってすばらしいですね。子どもの自己肯定感や共感力、社会性などの非認知能力は「体験」を通じて育まれていくと思っています。今は「体験格差」という言葉もあるけれど、やっぱり体験というのは、お金を払って何かを経験するとか、それだけじゃない。宗ちゃんのように、親と社会問題について話したり、いろいろな大人と会うこと、それこそがかけがえのない体験なんですね。
今枝:おっしゃる通りだと思います。
重子:でも、みんなが宗ちゃんのような家庭環境で育ったり、ほかの大人や社会との触れ合いがあるとは限りません。どうやったら、誰もが宗ちゃんのように自己肯定感や共感力、そして社会性などの非認知能力を育んでいけるとお考えですか?
今枝:それは、やっぱり「教育の中身」ですよね。