精神疾患で休職の教員、「全国最多の沖縄県が信頼回復へ」現在地と本気の対策 全国平均の約2倍のなぜ、見えてきた新たな課題
「まずICT×専門的人材の取り組みを行いました。オンライン相談窓口の設置、さらに教員向けセルフケア研修、管理職向けラインケア研修、復職支援の取り組みのすべてをオンラインで実施。休職者の現状分析や校長対象・全教員アンケート、学校訪問・校長ヒアリング調査など、メンタルヘルスに関する調査も行いました。2023年から始まったモデル事業ですが、沖縄県では2024年も引き続き行っています」(沖縄県教育委員会働き方改革推進課 課長 上江洲寿氏)
実際に取り組みが行われたのは2023年11月からだったため、十分な実績が出るのはこれからではあるものの、市町村が抱えるさまざまな課題が見えてきた。
「まず教育職員の主なストレス要因は保護者対応、対応困難な児童・生徒への対応、事務的な業務量でした。そしてメンタル不調の主な要因は仕事の質・量、人間関係で、職場にあることがわかったのです。これによりメンタルヘルス対策だけでなく、働き方改革も同時に行う必要があることがわかりました。
具体的にはこれまでは管理者によるラインケアが重要視されていましたが、鍋蓋型組織の学校ではそれにも限界があります。ラインケアだけに頼らない、学校組織に応じたメンタルヘルスケアを検討しています。また、相談窓口や保健師などの専門職が、第三者的立場から関与する仕組みの検討、効果的な復帰プログラムの見直しと再構築も進めています。
また、沖縄県はメンタルヘルスケア対策以前の問題として、労働安全衛生管理の啓発や活性化にも大きな問題を抱えています。そのため、それらの改善にも努める予定です」(上江洲氏)
実際に教員の安全と心身の健康を確保する労働安全衛生法などにより定められた取り組みに対し、沖縄県の小中学校は産業医の選任や衛生委員会の設置などが、全国平均の半分程度だった。そのため2024年度より那覇市教育委員会事務局に、保健師が配置された。それにより、学校における労働安全衛生管理の活性化に向けての学校回りがスタートしている。
現在は業務を優先するばかりに、自身のメンタルヘルスケアの重要性に気づいていない教職員がほとんどだ。若い年代からそれらの重要性に気づき、正しい知識や理解を身に付け、適切な行動を取れるようになることが急務となる。
(文:酒井明子、注記のない写真:jessie / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら