親が専門家顔負けの支援、発達障害の子「応用行動分析学」に基づく療育で注目 子どもの特性に合った関わりの技術を習得へ

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ADDSでは応用行動分析学に基づいた支援者の育成にも力を入れており、「ABAセラピスト養成研修」を実施している。計40時間の座学と実践の後、試験合格者を「初級ABAセラピスト」に認定している。資格取得者は大学生から現役の福祉職・教職関係者まで幅広い。

江戸川区では小学校を訪問して子どもの情報を引き継ぎ

特性を持つ子の子育てで悩ましいのは、就学先の問題だろう。対応も福祉の窓口から教育委員会になる。小学校に上がる前年度に行われる就学相談では、通常学級に在籍するのか、通常級に在籍しながら通級指導を受けるのか、または特別支援学級、特別支援学校なのかを決めることになる。

いずれの選択肢にせよ、子どもや保護者の意見が尊重され、一人ひとりの教育ニーズを満たす就学先を決めるには関係領域・機関の支援の「引き継ぎ」がカギになる。江戸川区発達相談・支援センターでは、福祉と教育の接続を円滑にする取り組みに熱心だ。

「当センターでは、基本的には支援を受けた子が入学するすべての小学校の先生方にお会いして、対面で引き継ぐことを大切にしています。引き継ぎを受けて下さるのは校長先生や副校長先生、特別支援コーディネーターの先生などが多いのですが、年度末であればほぼ学級担任が決まっている段階なので、担任の先生にも関わっていただきます。ですが、ただでさえ多忙な先生方が一人ひとりの情報をすべて把握して活用・対応するには限界があると感じています。

江戸川区では、さまざまな領域を超え、地域で支援者同士の顔が見える関係をつないでいくことを目指し、2023年度から江戸川区発達障害支援フォーラムという、子どもの発達支援に関わる関係機関、部署が集まる情報交換会も始まりました。区内の児童発達支援センター、区教育研究所、放課後等デイサービス事業者、児童相談所などが集い、それぞれの強みを知る事例検討会や、ブースを出しての交流タイムを行っています。フォーラムでお互いの活動を知り、顔の見える関係のきっかけができたのはとてもよかったですし、継続していくことが大切だと感じています」

関係者同士が日ごろからつながっていることで、発達障害支援の全体像を把握しやすいというメリットもある。文部科学省も、家庭・福祉・教育が連携して発達障害をはじめ障害のある子どもたちが切れ目なく支援が受けられるよう「トライアングル」プロジェクトを掲げており、地域における行政分野を超えた連携は今後も課題となるだろう。

「教育と福祉は、意識しないと接点を持たないままになってしまう可能性があるので、積極的な交流が生まれる仕組みづくりは大切だと感じています。学校の先生方には、特性を持つ子どもとのかかわり方や指導について一人で抱え込まず、地域の福祉や医療、保健など多様な領域の人材とコミュニケーションを積極的に取り、頼ることをお勧めします。

例えば、私たちのような障害福祉の領域では、特性のある子どもたちの『行動問題』が起きにくい環境整備や対応方法についての研修が整備されており、一定の知見を持っていますので、一緒に事例検討会などを実施することで、新しいヒントが得られるかもしれません。

福祉領域にとっても、学校と連携をさせていただくことで、多くの学びが得られると思います。領域を超えたゆるやかな顔の見える関係が、時にチームになって、地域で子どもを支えていく。学校内外で助けあうことで、地域のさまざまなリソースがよりよく活用され、子どもたちが安心して暮らせる地域をともにつくっていけると思っています」

(文・長尾康子、編集部 細川めぐみ、注記のない写真:ADDS提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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