幼保小の接続問題、通知表廃止した香川小で新たな実践「スタートカリキュラム」 学習指導要領の目標・内容とのひも付けは?
──現在の学校教育における「評価」について、山田先生はどのようにお感じでしょうか。
予測不可能な時代を生きる子どもたちには、コンピテンシー(資質・能力)が求められています。しかし、多くの学校では、3つの観点(①知識・技能、②思考・判断・表現、③主体的に学習に取り組む態度)を個別に評価しており、それぞれの観点がどのように結びついて、実際の課題解決に活かされているのかが見えにくいという課題があるように感じます。
本来は、知識を学び、それを活用して問題解決に取り組み、うまくいかないときには自己調整しながらやり直すという一連の過程を総合的に評価するべきなのではないでしょうか。テストの結果や知識の量だけでなく、知識をどう使い、自分がどう成長していくかという「学びに向かう力」を評価することにシフトしていくべきなのではないかと思います。
「学ぶとは何か」「子どもたちが遊ぶとは何か」
──1年生の担任を2年間務められた後、現在はどの学年の担任をなさっているのですか?
2024年4月から、4年生の担任になりました。スタートカリキュラムとは異なりますが、1年生の担任のときと同様に、プロジェクト学習ベースで、子どもたちの「やりたい!」の声を聞きながら毎週時間割をつくり、活動しています。
──学年があがっても、子どもたちと時間割をつくりながら活動することができるのですね。
学校のことをいろいろ知っている4年生なので、1年生のように純粋に響きにくい部分もありますが、ある程度私のほうから仕掛けながら、子どもたちの学びに向かう気持ちを後押ししています。
例えば、学校でケガをする子が多いので、保健室でまとめた情報を子どもたちに伝えたところ、算数の「表とグラフ」の単元とひもづけて表やグラフ化して「ケガをなくそうプロジェクト」として校内に呼びかけました。
また、総合学習で、地元の商店街を活性化することを目的に「香川商店街プロジェクト」に取り組んでいるのですが、その中の1つ「植物プロジェクト」で、学校の敷地に長方形の畑を作り、畑の囲いとして廃棄予定だった児童用机の天板を取り外して使用することになりました。
囲いの周囲の長さを測り、その長さに対して縦に並べる場合と横に並べる場合で、それぞれ何個の天板が必要かを計算する過程は、算数の2ケタ×2ケタのかけ算やわり算につながります。4年生なら4年生なりに「子どもたちと時間割をつくる」ことができることを実感しています。

──「スタートカリキュラム」による幼保小接続だけでなく、学び全般には連続性があるのですよね。
久保寺先生がいつもおっしゃっているように、子どもたちが0歳から18歳まで成長していく過程で、学ぶことは、切れ目なく1つにつながっているんですよね。
小学校の学習内容は、身近な生活に落とし込める要素がたくさんあります。教員自身が「学ぶとは何か」「子どもたちが遊ぶとは何か」といった根本的な問いを持ち続けながら、子どもたちが今を楽しく生きることに誘い、仲間と対話を重ねながらよりよい学校をつくっていこうと取り組み、「だれかの役に立った」と実感することを重ねていくことが、子どもの学ぶ意欲につながり、今を楽しく生きることにつながるのではないでしょうか。
(企画・文:長島ともこ、注記のない写真:すべて山田氏提供)
東洋経済education × ICT編集部
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