幼保小の接続問題、通知表廃止した香川小で新たな実践「スタートカリキュラム」 学習指導要領の目標・内容とのひも付けは?
そこで、入学直後の子どもたちから「学校探検したい」という声があがり、実際に学校探検しているときに、「教室表示を、1年生でも読めるようにひらがなでつくってみない?」と、子どもたちに提案したのです。子どもたちは「やりたい! いえーい!」と大喜びでした。
──ひらがなによる教室表示をつくるために、ひらがなの学習が始まったのですね。その後プロジェクトはどのように発展していったのでしょうか。
「教室表示をつくる」というモチベーションがあるため、子どもたちがひらがな学習に向かう姿勢は真剣そのものでした。特別教室の名前の語尾に「室」(しつ)がついていることに気づいた子どもたちからの提案で、ひらがな学習は「し」「つ」から始まりました。「教室表示プロジェクト」は、前期は「生活科」と「国語科」のひらがな学習、後期は算数科も加わり、子どもたちが切った木の数を数える活動を通して「20よりも大きい数の学習」を行いました。

さらに、教室表示が完成したあと、校長先生に教室表示を飾っていいか相談したり、全校児童に教室表示をつくったことを伝えるためにチラシやポスターをつくったり、校内放送で告知したりもしました。

(写真:長島氏撮影)
子どもたちは、ひらがなや数を学びながら教室表示を皆で力を合わせてつくり、全校児童に自分たちの取り組みを知ってもらうことで、充実感や一体感、クラスへの所属感などを体感し、大きく成長できたと思います。
年度が変わり、新1年生が教室表示のひらがなを読んでわかる様子を2年生になった子どもたちに伝えると、とても喜んでいました。誰かのためにしていることが、自分のためにもなっている。このような学びを積み重ねることが、より豊かに生きる意欲につながるのではないでしょうか。
──ほかに、どのような時間割を子どもたちとつくり、実践したのでしょうか。
本校の敷地に、桜やイチョウなどの木が生い茂る「香川の森」があります。生活科や図画工作科で自然物を使う活動を秋の時期に行っているのですが、授業で使われなかった落ち葉が燃えるゴミとして捨てられていたため、子どもたちと腐葉土づくりができないかと考えました。
春の花を栽培するために「香川の森」にある土を植木鉢に入れる際、子どもたちから出た「落ち葉もいっしょに入っちゃうけどいいの?」という質問に「葉っぱは土になるから大丈夫だよ」と答え、「落ち葉が土になるか、実験してみる?」と提案。子どもたちから「うん、やるやる!」と声があがり、「腐葉土プロジェクト」に取り組みました。
また、冬のいちばん寒い時期に、氷に色を塗って創作活動できたらと思い、子どもたちと、家庭科室のたらい20個に水をため、葉や花などを入れて毎日観察しました。

ある日ついに氷ができ、子どもたちは大喜び。その日の時間割はほかの活動の予定だったのですが、「今すぐ氷を使って活動したい」という子どもたちの思いを感じ、時間割を変更して氷遊びの時間に。皆でたらいからそっと氷を取り出し、絵の具で氷に色をのせ、「氷のアート」を楽しみました。これらは私の実践のほんの一部です。

茅ヶ崎市立香川小学校総括教諭
2005年より教員になり、2024年で20年目。2018年から香川小に勤務。2024年9月、1年生を担任して2022年度の1年間の実践をまとめた『時間割から子どもと一緒につくることにしてみた。』(学事出版/共著)を出版。神奈川県「第1回いのちの授業大賞」優秀賞受賞。教育研究会「根源」主宰。「ちがさきスポーツサポーターズフェライン(一社)」理事
(写真:長島氏撮影)
保護者もよい形で巻き込み、共に学ぶ
──このような実践について、保護者への理解や協力はどのようにして得られたのでしょうか。