東大推薦合格や入賞を果たす生徒も、秋田県採用「博士号教員」の探究指導が凄い 県内の小学生から高校生まで探究をサポート

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文部科学省は2024年3月に「博士人材活躍プラン~博士をとろう」を公表し、博士人材が多様なフィールドで活躍できるよう各種取り組みを進めている。教育現場では以前から、博士号取得者を教員として採用する自治体があるが、その先駆けとして知られるのが秋田県だ。2008年から独自に「博士号教員」を採用してきた。探究学習が推進され、理数教育強化の必要性が問われている昨今、ますます期待される場面が増えている博士号教員の取り組みを取材した。

狙いは、県の弱点だった「理数工学系人材の強化」

2008年から博士号教員の採用を行ってきた秋田県。先んじて取り組んできた狙いはどこにあったのか。秋田県教育庁高校教育課管理チームのリーダーを務める石井勇悦氏は次のように語る。

「当時、県知事や教育長などでつくる秋田県発展戦略会議で、学校教育の質的向上策として、県の弱点とされていた理数工学系人材を強化することが提案されたことがきっかけです。そこで、理学、農学、工学などの博士号取得者を公立高校に採用することになりました」

採用初年度の2008年は志願者57名に対し、採用は6名。以降、断続的に年1名を採用してきた。県単独で予算を組んでいるため、欠員が生じれば採用する方針を採っている。合格者が教育免許を持っていない場合は採用後に特別免許状を授与し、通常の教員と同様に初任者研修も実施しているという。

これまでの採用実績は12名(うち非常勤1名)で、物理、化学、工学、生物、農学、生物資源科学、環境資源学などを専攻した博士号取得者を採用してきた。出身は秋田県に限らない。これまで5名が退職しており、常勤の博士号教員は現在7名。専門高校3校といわゆる進学校4校に配置されている。

博士号教員は担任を持たず、人事異動の頻度も比較的少ない。主に探究の指導や、県内の公立小中学校・高等学校などへの出前授業や理数科合同研修会での指導、高大連携や進路指導などを担う。しかし持ちコマ数は、普通の教員と同様に16~18コマ近くを担当するケースが多いほか、高校の行事参加や校務分掌なども担当しており、実態としては一般の教員と働き方はそれほど変わらない。

「秋田県には理数科のある高校が6校、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校が2校あり、それぞれ課題の成果を発表する会などを実施しています。そこでも博士号教員が指導・アドバイスしています」(高校教育課指導チーム指導主事の後藤直地氏)

石井氏は、「博士号教員の方々は非常に優秀です。授業や課題研究について一般の教員が担えないような高度な内容を指導いただいており、博士号教員でなければ達成できない成果を上げてもらっています」と話すが、実際にどのような指導を行っているのだろうか。

専門性に基づく指導、大学とスムーズに連携できる強みも

現在、秋田県立秋田高等学校で生物を担当している遠藤金吾氏(47歳)は、埼玉県出身。大学院では生命科学を専攻していた。

遠藤金吾(えんどう・きんご)
秋田県立秋田高等学校 教諭
埼玉県出身。東北大学農学部卒業。東北大学大学院生命科学研究科博士課程前期・後期修了 博士(生命科学)取得。東北大学加齢医学研究所科学技術振興研究員を経て、2008年より秋田県の博士号教員。2016年より現任校に勤務。専門は「DNA修復と突然変異生成機構」

「ポスドク時代に研究の世界に限界を感じ、教員になろうと思って応募しました。採用時に特別免許状をいただきましたが、大学時代に教職科目をある程度取っていたので、すぐに残りの科目を取り、専修免許状を取得しました」(遠藤氏)

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