便利な「無料AI翻訳」なぜ仕事で使うとヤバいのか リスクは入力した情報の二次利用だけではない
「製造業などは軍事転用可能な技術を取り扱うケースもあり、海外のサーバーに置くことを禁じられている情報も少なくありません。取引先の情報を取り扱ううえでも、サーバーについて明らかにしていなかったり、連携している外部システムのセキュリティの確認に手間取ったりするAI翻訳サービス企業もありますので、きちんと確認しましょう」と瀬川氏は助言する。
ただ、求めるセキュリティの度合いは企業ごとに違うので、まずはセキュリティチェックシートなどを使い、導入を検討しているサービスが自社のレギュレーションを達成しているかどうかを確認したい。
「自社のセキュリティに関するレギュレーションを提示してやり取りをしてみて、対応に不満があれば採用しないほうがいいし、リスクが見えたとしてもそのリスクを許容できるなら採用すればいい。このあたりのことは、多くの企業の情報システム部は理解しているはずです」と、瀬川氏は言う。
問題は、セキュアなAI翻訳サービスを導入した後だ。セキュリティを厳しくし過ぎると、誰も使わないという。
「われわれの2021年調査でも、有料のAI翻訳サービスがあるのに8割の社員が無料のAI翻訳サービスを使っていたケースがありました。その理由は、有料サービスを使う場合、社内手続きが面倒なことにありました。社員が使いたいときに速やかにいくらでも使えるようにしておかないと、いくらルールをつくっても守られません」
無料のAI翻訳サービスは、セキュリティリスクを知っていたとしても、やはり簡単にアクセスできてすぐに結果も出してくれるので、その利便性には抗えないのだろう。そのためまずは、どれくらいの社員が無料のAI翻訳サービスを利用しているのかを把握することが重要だという。
「実際に調査してみて驚く企業は多いです。例えば、生成AIの導入後に新しいレギュレーションが守られているかを調査したところ、翻訳目的で外部のAI翻訳サービスにアクセスしている社員が多くいたことが判明した企業もあります。日常業務で翻訳機会のない社員が、ときどき必要に迫られて無料サービスを使ってしまうのでしょう。ここが最大のリスクですので、外国語利用の頻度が少ない社員でも自由に機嫌よく使える形で有料サービスを提供すべきです」
セキュリティリスクを勘案すれば、無料のAI翻訳サービスは使わないほうがいい。しかし、有料サービスがあっても、社員は気軽に使えなければ無料サービスに流れてしまう。セキュリティと生産性を両立できるバランスを取ることが重要だ。
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